「戦狼(せんろう)外交官」として名をはせた中国外務省報道官の趙立堅氏が今年1月上旬に左遷された。同月29日、中国大使館は日本国民への中国一般ビザ発給再開をひっそりと告知した。中国人渡航者に、新型コロナウイルス感染症検査を導入するなど対応を厳格化した日本への対抗措置が日本人へのビザ発給停止だった。
2月に入り、中国はオーストラリア産ワインや大麦の輸入規制撤廃に向けた協議を始めると表明。1月には豪州産石炭の輸入も再開された。新型コロナの発生地調査を主張した豪州への報復が中国による豪州産ワインや石炭の輸入禁止だった。1月17日、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム(WEF)」の年次総会(ダボス会議)で、劉鶴副首相は「中国は計画経済に絶対に戻らない」と自由経済を強く支持した。一連の兆しから中国が「戦狼外交」から「微笑外交」に路線変更したとの見方が国際社会に広がった。果たしてそうか。
中国が諸外国との関係改善に乗り出したのは、彼らが中国共産党の価値観の異常を反省したからではなく、二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなった経済が最大の理由であろう。