ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく1年。ロシアによる不法占拠が続く北方領土を巡っても日露間で緊張感が高まっている。ロシア政府は北方四島周辺水域での日本漁船の安全操業を担保する協定の中断を一方的に通告。「ビザ(査証)なし交流」について定めた日本との合意文書を失効させた。日本の対露制裁に反発した措置とみられ、軍事的挑発や日本漁船の不当な拿捕(だほ)などを仕掛けてくる恐れも指摘されている。北方の脅威に対する備えは万全か。「国境の海」の現状をルポした。
離島を除く日本本土で最東端の地にある北海道根室市の納沙布(のさっぷ)岬。寒風吹きすさぶ海上に目をやると、斜めに傾く朽ちかけたコンクリート製の塔が見えた。歯舞群島・貝殻島の灯台だ。
昭和12年、海の難所として知られる珸瑶瑁(ごようまい)水道を航行する船の安全のため日本が建設した。岬からわずか3・7キロ。関西空港と対岸を結ぶ連絡橋の長さと同じ目と鼻の先にあるが、ロシアに不法占拠されて以降、保守管理ができていない。