中国の人口が61年ぶりに減少に転じた。中国国家統計局は、2022年末の総人口が前年末比85万人減の14億1175万人だったと発表した。インドの人口が中国を上回り、世界最多となった可能性がある。
人口減は経済の縮小、ひいては国力の低下に直結する。中国では、国民全体が豊かになる前に高齢化が進む「未富先老(みふせんろう)」が現実のものになりつつあり、貧富の格差も拡大している。
中国経済の縮小が世界経済の不安定要因になることは避けなければならないが、構造的な問題を抱えたまま従来の成長路線を維持することは至難の業といえよう。「世界の工場・市場」として世界経済を牽引(けんいん)した時代は曲がり角にあると認識すべきである。
ここへきて人口減となったのは、1組の夫婦に1人の子供しか認めない「一人っ子政策」を、1979年から長年にわたって導入した影響だ。
2016年に第2子を持つことを認め、21年には3人目の出産を容認したが、少子化に歯止めはかかっていない。
中国の人口はこれまでも、1960年と61年に減少している。毛沢東が58年に始めた急進的な農工業の増産運動である大躍進政策で農村経済が大混乱に陥り、食糧不足により約4500万人もの餓死者を出したとされる。
強権国家には、国内問題で国民の不満がたまれば、内外への強硬路線で政権への批判をかわし、暴動などに発展しないようにする傾向がある。
中国は、東京五輪開催中の64年10月に核実験を強行し、66年に始まる文化大革命に伴い「造反外交」を展開した。
習近平国家主席も経済の衰退から社会不安が広がり、政府への批判が高まりそうになれば、求心力を維持するため、周辺諸国との緊張を高める行動に出ることが考えられる。台湾侵攻に踏み切る可能性すらある。日本は一層の警戒感をもって中国の動向を注視しなければならない。
習氏は昨年の共産党大会で、異例の3期目に入ったばかりだが、任期最終年である2027年までに、4期目をにらみ、実績作りのため台湾統一に動く、との見方は以前から絶えない。中国がそのタイミングをうかがっていることを忘れてはならない。