日本郵便は、最新のデジタル技術を駆使した次世代型郵便局を千葉県市川市に新設、13日から稼働を始める。無人搬送車(AGV)を本格運用するほか、作業状況の可視化システムやスマートフォンを使った運行管理を初めて導入する。将来的な人手不足を見据え、一連の取り組みで物流配送の効率化を進める。新設局を郵便DX(デジタルトランスフォーメーション)の起点として機能させたい考えだ。
新たに開局するのは「市川南郵便局」。東京湾に面する市川・塩浜地区の一画にあり、首都高速道路にも近く、周囲には大型物流拠点が立ち並ぶ。郵便物流のハブ拠点となる「地域区分郵便局」という位置づけだ。地域区分局は市川南局を含めて全国に62局あり、担当エリア内の郵便局が集めた郵便物や荷物を全国へ発送する役割と、全国から届いた荷物をエリア内の郵便局へ仕分ける役割を持つ。
市川南局は、日本郵便では2カ所目の賃貸物件で、地上4階建ての1階(床面積約4万3000平方メートル)部分を占有する。浦安や市川、野田や柏など郵便番号「27」で始まる17局と、法人契約を結ぶ大手アパレルやテレビ通販など大口顧客の荷物を扱う。1日当たりの取扱量は郵便物230万通、荷物約8万個を想定する。
荷さばきは南北300メートル、東西約130メートルの広さの作業場一カ所で行う。地域区分局の中でも「1フロアでは最大」という。郵便物や荷物を仕分ける区分機と呼ばれる装置の最新式が並ぶ中、仕分けた荷物を積むかご型カート(パレット)の移動はAGVが担う。59台を配備したことで人の作業量を約2割削減できるという。
AGVの動きや区分機の稼働状況などは初導入の「制御管制システム」で一元管理し、局内作業を可視化する。
また、エリア内の各郵便局への荷物輸送も高度化する。配送ドライバーが車両に積み込む際、カートに取り付けた荷札のQRコードをスマホで読み込むだけで、制御管制システムに情報が届くよう設定。通常はドライバーが荷積み後に紙伝票を作成し、局員が手入力で管理していた手間が省ける。さらに、ドライバーが保有するスマホの衛星利用測位システム(GPS)情報を制御管制システムに反映させ、トラックの運送状況も分かるようにした。
市川南局について、日本郵便の衣川和秀社長は「DXの本格的な実運用に対応したトップランナーの位置づけだ」と話す。導入した各システムは将来的に全国で展開していく方針。荷物の移動状況の可視化などで得られるデータは、効率的な配送ルートを導き出す人工知能(AI)技術に活用したい考えだ。(日野稚子)