地震の際に超高層ビルなどを大きく揺らす「長周期地震動」が、1日から気象庁の緊急地震速報の対象に加わった。
周期が長い地震波は、あまり減衰せずに遠くまで伝わる性質があり、平成23年の東日本大震災では、震源から遠く離れた首都圏や大阪でも、多くの高層ビルで大きな揺れが長く続いた。
ガタガタと感じる一般的な地震動とは異なることから「ゆっくりとした揺れ」などと表現されることもあるが、立っていられないほどの大きな揺れで、重いコピー機が猛スピードでフロアを走り出すといった事態も起こる。
長周期地震動の脅威を正しく認識し、家具やオフィス機器の固定など平時の対策を徹底したい。そのうえで、速報が発表されたときには落ち着いて「命を守る行動」をとることが大事だ。
気象庁は長周期地震動について4段階の階級を定めており、立っているのが困難で固定していない家具が動く「階級3」、這(は)って動くのが精いっぱいで揺れに翻弄される「階級4」、が予想される地域に速報を出す。
震度5弱以上の強い揺れが予想される地域などに従来の緊急地震速報が出された後に、震源から離れた地域を含めた広域に長周期地震動の速報が出る、といったケースが想定される。震源からの距離によっては、速報から地震動の到達までに数分程度の時間がある場合も考えられる。
このとき、高層階から地上や低層への「避難」を始めるのは非常に危険だ。エレベーターがまだ動いていたとしても、乗ってはいけない。エレベーターの中で、あるいは多くの人が非常階段で低層へ避難している途中で、大きな揺れに襲われたときに生じるリスクは極めて大きい。
「大きな揺れが来るぞ」と言われれば、本能的に「逃げたい」と思うだろう。だからこそ、高層階に住居や職場がある人は平時のうちに、安全確保の選択肢から地上や低層への「避難」を消去しておく必要がある。
そのためにも、家具や機器を固定し、できるだけ広く安全な空間を作っておくことが大事だ。
南海トラフや東北沖の巨大地震で東京や大阪が機能不全に陥れば被災地への支援も滞る。長周期地震動による被害と混乱は可能な限り小さくしておきたい。