宗教法人法を問う

暴力団排除規定追加に国応じず 福岡など9県要望も

税優遇措置がある宗教法人の設立などを定める宗教法人法について、特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・北九州市)を抱える福岡など9県が、法人役員の資格や解散命令の要件に暴力団排除規定を盛り込むよう国に要望していることが5日、分かった。過去には暴力団が絡む宗教法人を悪用した脱税事件なども起きており、暴力団の拠点がある兵庫県なども共同提案しているが、国は「実効性が乏しい」と応じていない。

宗教法人法第22条は、法人役員の欠格事由について①未成年者②職務を適切に行うだけの認知、判断及び意思疎通ができない者③禁錮以上の刑で執行中など-と定める。ただ、暴力団の排除規定は含まれていない。

都道府県は国の法定受託事務として、宗教法人の設立認証なども請け負う。しかし、暴排規定のある公益財団法人などとは異なり、宗教法人は役員となる人物に暴力団員の疑いがあっても警察に照会できず、表面上の手続きが適切ならば認証せざるを得ない。既存の法人に暴力団員がいることが分かっても、解散命令を請求できるのは、同法81条で定める「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」が判明した場合に限られる。

平成21年に東京地検が摘発した脱税事件では、休眠状態の宗教法人を暴力団組長らが取得し、地上げに法人を介在させるなど、暴力団が宗教法人を悪用する事件は起きている。このため、福岡県は法人役員の欠格事由に「暴力団員等」を追加▽解散命令の要件に「暴力団員等がその事業活動を支配するもの」-といった暴排規定を同法に盛り込む措置を考案した。

福岡案には、特定抗争指定暴力団「山口組」(本部・神戸市)がある兵庫や宮城、沖縄など8県も賛同。平成30年から毎年、福岡県の先導で内閣府に追加の要望を出しているが、具体的な検討に至っていない。

福岡県の担当者は「暴排規定が追加されれば、暴力団は身分を隠すかもしれないが、抑止の第一歩として法律で暴排を明示すべきだ」と指摘。兵庫県の担当者も「暴排の機運が高まる中、宗教法人に暴力団の関与を防ぐ法的根拠がないのは疑問だ」と話す。

一方、内閣府は「ここ10年、宗教法人に暴力団が関与したような事例は聞いていない。現時点で制度改正による実効性は薄い」としている。(「宗教法人法を問う」取材班)

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