「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱」テレビ朝日系 土曜午後11時30分
舞台は、地方都市で代々続く煙火店。4代目となる望月航(橋爪功)の息子、星太郎を演じる。平穏な日常を送っていたが、ある日、航が「すまん」の一言を残して急逝。しかし、数カ月後、航が幽霊となって現れる-。
向田邦子賞を受賞した脚本家、橋部敦子のオリジナル作品。「日常的な会話がそのまま落とし込まれているような台本なので、今までちょっと使ったことのない筋肉を使っているような気がします。一般的なドラマとはリズムが違うところが魅力かな」と明かす。
橋爪が共演を希望したという。何げないせりふのやりとり、小気味よい会話が印象的だ。「橋爪さんがおやじだったらこんなふうだったんだろうなって、後で思い返せるような瞬間がある。そこで得たものをさらに次のシーンに生かしている。完全に手探りです。親子の糸みたいなものがピッとつながる瞬間を感じるのが面白いかもしれない」と笑う。
星太郎は、9歳の時に両親が離婚。家業を継いだものの、新型コロナウイルス禍で花火の打ち上げ機会も減り、経済的不安を抱えている。幽霊になった父との暮らしや、謎の女性、ひかり(本田翼)との交流を通して、ゆっくりと何かが変わっていく。「周りの温かい人たちを巻き込みながら、外に出ていこうと一歩踏み出す話になるんじゃないかな」
子役からキャリアをスタートさせ、癖のある役からコミカルな役まで、変幻自在に演じ分ける。「やりきっちゃったので、十分に満足しています」というが、「人生も芝居も他者が存在しないと面白くならない。『一生とやってみたい』という声にはお応えしたい。目の前にあるものをできる限り楽しむのが、人生の醍醐(だいご)味じゃないかな」。(油原聡子)
〈たかはし・いっせい〉昭和55年、東京都出身。子役を経て多くの舞台やテレビ、映画で活躍中。映画「シン・ゴジラ」、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない」などに出演。