同時に、スマホ購入や切り替えの手続きができるようKDDIのショップを出張所として村内に設けた。その取り組みが継続して、現在は出張販売も兼ねた「よろず相談所」として運営されている。
このほか、村唯一のスーパーマーケットにも代理店を置いて販売キャンペーンを展開するなど、住民の生活圏内に出向くようにした。こういった施策が、スマホの普及につながったようだ。
健康、防災、情報。デジタルサービスも好調
スマホ普及事業と両軸で始めた、「健康」「防災」「情報」の3分野でのスマホ活用事業も好調だ。
健康分野では、KDDIが提供する「ポケットヘルスケア」を21年6月から1年間、展開。健康管理や健康関連の情報取得ができるほか、健康活動ポイントに応じたインセンティブとして村内で使える地域通貨を付与して、利用を促進した。
その結果、663人の住民がサービスを利用した。提供終了後、アプリの利用による医療費抑制効果を分析したところ、概算(※)で約1000万円の結果となった。
地域通貨はスマホ普及活動にも連動させ、ガラケーからスマホへの切り替え、紹介などによりポイントを貯められるようにした。さらに、村が推奨するアプリをスマホにダウンロードし、マイナンバーカードを設定すると1万ポイントを付与するキャンペーンも実施。約1200件の応募があった。
防災分野では、高知県が提供する「高知防災アプリ」を活用。雨量など防災関連の情報通知や防災マップの表示、安否確認などが可能だ。
村民への情報はLINEで自治体公式アカウントをつくり、運営している。通行止めや大雪の際の凍結防止剤の配布など、緊急性が高い情報を主に配信し、住民から好評だという。現在の登録者数は人口の約34%となる約1700人で、そのうち50代以上が58%だ。
普及率100%にできるのか
日高村のスマホの普及率は約80%に上がったと紹介したが、分母には0~9歳までの子どもやスマホを持つのが難しい要介護者や障がい者も含まれる。そういった住民を除外すると、実質の普及率は約86%となる。いまだスマホを持たない住民は、約500人だ。
「この500人の方たちは、必要ない、使い方が分からない、価格が高いという3つとは別の課題も抱えているはず。例えば、感情論的なもので行政を信用できない、デジタルの安全性を疑っているとか。イノベーター理論でいうラガード(遅滞者)で、とにかく保守的。
特別なことをするというより、現在の取り組みを継続していくことが重要かなあと。そのうえでポイントを付与するなど、プラスワンの取り組みを都度やっていく必要があるでしょう。何がササるかは分からないので、トライアンドエラーを高速で進めていきます」(安岡氏)