企業の成長性を担保に融資 スタートアップ支援へ新制度

金融庁の入る中央合同庁舎=東京都千代田区
金融庁の入る中央合同庁舎=東京都千代田区

金融庁は5日までに、企業が事業そのものの成長性を担保に金融機関から融資を受けられる新たな制度「事業成長担保権(仮称)」の創設へ向けた具体案をまとめた。土地などの資産がなくても融資を受けられる仕組みで、規模の小さいスタートアップ(新興企業)などの資金調達を支援し、経済成長につなげる狙い。令和5年度内に関連法案を国会に提出し、数年以内の制度開始を目指す。

スタートアップは担保となる土地や建物といった不動産などを持たない場合が多く、経営者個人が連帯保証人になることが求められるなど融資が受けにくい。

これに対し新制度は、企業が持つ技術力や専門ノウハウなど事業の成長性・将来性を担保に設定して銀行などの信託会社と信託契約を結び、信託会社が指定した金融機関が融資する仕組み。返済が滞った場合は、事業そのものを売却するなどして返済に充てる。

岸田文雄政権はスタートアップ支援を重要政策に掲げている。独自の技術や新たなビジネスモデルの開発などを武器とし、近年はITの発展などで急速に数を増やしているからだ。

ただ、内閣官房によると2021年のベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資額は、米国の36・2兆円に対し、日本は0・23兆円にとどまる。政府は新制度を通じて資金調達の環境を改善したい考えだ。

新制度は、資産のないスタートアップの資金調達の後押しとなる半面、土地などの有形資産を担保に取る場合に比べて融資のリスクが高くなる。このため成長性に対する客観的評価や、融資後の事業支援が適切に行われるかが重要となる。

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