SAITAMA珍奇ツアー

住宅街のど真ん中に超短距離滑走路!? 謎のぶつ切り舗装路の正体は 埼玉・志木市

和光富士見バイパスのモデル整備地区。両端は分断されて〝行き止まり〟になっている=埼玉県志木市(中村智隆撮影)
和光富士見バイパスのモデル整備地区。両端は分断されて〝行き止まり〟になっている=埼玉県志木市(中村智隆撮影)

埼玉県南部に位置する志木市は東京の衛星都市として人気で、人口密度の高さも県内で上位に入る。その外れの住宅街の中に、両端を分断され、ぽつんと孤立する不思議な舗装路がある。上空から見ると航空機の滑走路のよう。ただ、それにしては全長が約120メートルとあまりにも短く、住宅も近すぎる。一体、何のための道なのか-。

志木市を流れる新河岸川のほど近く、朝霞市との境のそば。住宅や学校が集まる一角に件の舗装路はあった。広い車道を擁し、脇には歩道と街路樹を備え、周囲の道より格段に立派だ。だが両端とも小道などにぶつかり〝行き止まり〟。車止めが置かれ、車両は入れないようになっていた。

スマートフォンで上空からの画像を確認してみる。すると空港などの滑走路のように見えた。だが、だとすると短すぎるし、何より住宅が近すぎる。もちろん航空機の離着陸に必要となるような設備もない。何の目的で作られたのか。「この道を行けば分かるか」。とにかく歩いてみた。

和光富士見バイパスのモデル整備地区。上空から見ると滑走路のようだ(国土地理院ホームページから)
和光富士見バイパスのモデル整備地区。上空から見ると滑走路のようだ(国土地理院ホームページから)

南側に看板を見つけた。「一般国道254号和光富士見バイパス」「モデル整備地区」。県朝霞県土整備事務所によるもので、バイパスに「具体的なイメージを持っていただき、道路整備への一層のご理解をいただくために、モデル的に一部区間を整備しました」と記されていた。「道路の見本」ということらしい。

バイパスは和光市の東京外郭環状道路(外環道)から富士見市の国道463号を結ぶ延長約6・9キロの道路で、周辺道路の混雑緩和などを目指して整備が進む。令和2年3月に和光市側から約2・6キロの区間が開通。現在、富士見市側から約1・4キロの区間の工事が行われ、5年中の開通が見込まれている。

道路整備に慎重意見はつきもの。モデル地区は住民らに完成後の姿をイメージし納得してもらうために約10年前に作られ、その後の用地買収などに一定の効果があったとみられる。この地区は未着工の約2・9キロに含まれ、最終的にはバイパスの一部となるそうだ。

市内の70代女性は「最初は何のためなのか不思議だったけれど、今は『こういうものか』という感じ」。県はバイパスの全線開通の時期に関して確定的なことは言えないというが、住民らは、その前の「特別な時間」に散歩やボール遊びなどを楽しんでいた。(中村智隆)

■メモ ▽所在地=埼玉県志木市下宗岡地内▽アクセス=JR北朝霞駅から車で約10分▽周辺情報=新河岸川が近く「いろは親水公園」があるほか、「敷島神社」などもある。


SAITAMA珍奇ツアー

埼玉県内には知られざる、知れば心が躍る、怪しくも楽しいスポットがたくさん。強烈なインパクトを放つ観光地に激しい個性を持つお店、果ては妖怪伝説のある土地まで…。「珍奇な旅」を提案します。

会員限定記事会員サービス詳細