ブリンケン国務長官 訪中延期発表 偵察気球飛来「主権侵害」

偵察用とみられる気球=1日、米モンタナ州(Larry Mayer/The Billings Gazette提供・AP=共同)
偵察用とみられる気球=1日、米モンタナ州(Larry Mayer/The Billings Gazette提供・AP=共同)

【ワシントン=渡辺浩生】バイデン米政権は3日、米国本土の上空で中国のものとみられる偵察気球が発見され追跡していることを国防総省が2日発表したことを受けて、3日夜に出発予定だったブリンケン国務長官の中国訪問を延期した。気球飛来を「米国の主権と国際法の明白な侵害」(ブリンケン長官)と深刻に受け止めており、建設的な訪問に適した状況ではなくなったとしている。米中関係は再び緊張の度合いを深めている。

訪中は意思疎通の維持を確認した昨年11月の米中首脳会談で合意。しかし、米上空からの秘密情報の収集が疑われる気球飛来は国家安全保障にかかわる事態として、対中強硬姿勢を強める議会からも中止や延期を求める声が高まっていた。

米中間では、中国が軍事的威圧を強める台湾情勢やロシアによるウクライナ侵略など意思疎通が不可欠な課題が山積しているが、長官訪中を延期しても、厳格な態度を中国側に即刻示すべきと判断したとみられる。

ブリンケン長官は3日、国務省で韓国の朴振(パク・チン)外相との合同記者会見の冒頭に偵察気球に触れ、中国の外交担当トップ、王毅共産党政治局員に同日、電話で「無責任な行為であり、訪中直前にこのような行動をとる決断は議論の弊害となる」と伝えたと明らかにした。

ブリンケン氏は、外交的な関与は維持し「状況が許せば」訪中する考えを示す一方、偵察気球を米国領空から撤退させることが先決と強調した。国防総省によると、気球は「機動式」で米大陸中部の上空を飛行、同省は監視を続けている。

昨年11月、インドネシアで行われたバイデン大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談で、米中間の緊張が不測の事態に発展することを回避するため、意思疎通を維持・強化することで一致した。ブリンケン長官は対話路線を軌道に載せ関係悪化を防ぐ「防護柵」の構築を目的に今月の訪中を準備。国務長官として2017年のティラーソン長官以来となる習氏との会談が北京滞在中に行われる見通しだとも欧米メディアは報じていたが、関係が再び冷却化するのは避けられない事態となった。

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