大阪のダイオキシン、反発続きで25年経ても定まらぬ最終処分

ダイオキシンを含む廃棄物を仮置きする旧保育所=大阪府豊能町余野
ダイオキシンを含む廃棄物を仮置きする旧保育所=大阪府豊能町余野

大阪府豊能町と能勢町でつくる豊能郡環境施設組合が四半世紀もの間、焼却施設(廃炉)から出た有害なダイオキシンを含む廃棄物と決別できずにいる。当初は他県での処理を模索したが実現せず、通知をせずに神戸市の最終処分場で埋め立てた。結局回収に追い込まれ、豊能町内に6年以上仮置きした状態が続き、昨年8月には仮置き場での最終処分案も頓挫した。組合は処理を終えるまで解散できず、年間数千万円の公費負担を生み続けている。

埋め立て通知せず

大阪府北西部の山間にある旧豊能町立双葉保育所(同町余野)。園庭で朽ちかけた遊具にかつての面影を残すが、園舎の中には所狭しと並ぶ大きな袋がガラスの扉越しに見える。中に詰まっているのはダイオキシンを含む廃棄物や土だ。

豊能、能勢の両町長が正副管理者を務める組合は、飛散を防ぐためコンクリートで粒状に固められた廃棄物が混じる土を318袋分(計244トン)保有。豊能町役場周辺の旧保育所など計3カ所に分けて仮置きしており、担当者は「屋内で管理しておりダイオキシンが漏れる恐れはない」とする。

廃棄物のルーツは平成9年にさかのぼる。両町から出るごみの焼却施設「豊能郡美化センター」(能勢町)で排ガスから高濃度のダイオキシンが検出され、土壌汚染も見つかった。住民は10年、両町や焼却施設メーカーなどを相手取り公害調停を申し立て、12年に成立した。

組合は調停をもとに、汚染土壌約1万1千トンを産業廃棄物として処分。豊能町分の焼却灰は産業廃棄物ではなく一般廃棄物としたため、町外での処理には現地自治体への通知が必要になり、三重県内や福岡県内での処分を試みたが住民らの反対で頓挫した。

このため焼却灰を固化処理して産廃に切り替え、28年に約35トンを神戸市に通知せずに同市内の最終処分場に埋め立てたが、市に反発され回収。廃棄物はこのときに掘り起こした土も含めておよそ8倍の重さに膨れ上がり、豊能町内で仮置きを続けている。

のしかかる財政負担

31年3月に初当選した塩川恒敏・豊能町長は組合の管理者として、旧保育所の園庭に廃棄物の最終処分場を建設する案を打ち出した。だが周辺住民の反発を受け、昨年8月の組合議会で建設用地の見直しを表明。「将来を見据え処理場所を流動的に検討するほうが、よりよい結果に結びつく」と理解を求めたが、議員が「混乱を招いた責任は大きい」と問責決議案を提案、可決された。

旧保育所周辺の住民は当初、2カ月間の約束で仮置きを受け入れたが、すでに6年がたつ。近くに住む大谷剛さん(46)は「仮置きと言われ長年協力したのに、ここで最終処分をすると言われ裏切られた思い。行政の責任で生まれた廃棄物のつけを住民に背負わせるつもりか」と憤る。

行き場のない廃棄物は財政面での重しにもなる。組合は廃棄物の処理が終わるまで解散することができず、職員の人件費など年間約4千万円を両町で負担し続けている。

人口減少が続く豊能町は昨年4月、国が過疎法で財政支援する対象地域に指定された。国の財政措置などを見込んで公共施設の再編を計画しており、組合はこの再編に合わせて最終処分場所を探している。だが、「旧保育所を含めた周辺」という方針があるだけでめどはたっていない。

「外部意見聞く仕組みを」

豊能町や能勢町と同じくダイオキシンに長年悩まされてきたのが、日本最大級の不法投棄事件が起きた香川県・豊島の住民だ。島内では昭和50年代、事業内容を偽って産廃処理場を建設した業者が、各地から産廃を引き受け野焼きしダイオキシンが発生した。平成2年に兵庫県警が業者を廃棄物処理法違反容疑で強制捜査。有罪判決を受けた業者は9年に破産した。

住民側は処理場建設を許可した県などを相手取り、公害調停を申し立て12年に成立したが、産廃撤去や地下水浄化の総事業費は約800億円に上った。昨年3月に海への地下水流出を防ぐ壁が外されたが、局所的な汚染源は今も残り、雨水の浸透などで浄化が進むまで監視が続く。

公害調停の弁護団として元日弁連会長の故中坊公平弁護士とともに住民側を支えてきた大川真郎弁護士は「豊島の問題では行政に有識者らの意見を反映させる検討委員会や、住民と意見を交わす協議会を設けさせたことで解決への道筋がついた。豊能町の問題でも組合が単独で解決を目指すのではなく、こうした仕組みづくりが必要だ」と提案している。(山本考志)

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