ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、最激戦地である東部ドネツク州の要衝バフムトについて「われわれは可能な限り戦う」と述べ、ウクライナ軍に同市を放棄する考えはないと表明した。首都キーウ(キエフ)で同日開かれた欧州連合(EU)との首脳会議後の記者会見で発言した。複数の米メディアは、米欧諸国がウクライナ軍に戦力温存のためバフムトから撤退すべきだと助言していると報じていた。
ゼレンスキー氏は会見で「われわれはバフムトが要塞であり、そこで戦死した人々を英雄だと考えている」と強調。米欧諸国に求めている長距離兵器の供与が迅速に実施されれば、ウクライナ軍はバフムトにとどまらず、ドネツク州の露占領地域の奪還に取りかかることができると訴えた。
これに先立ち、米CNNテレビは1月下旬、バフムトには軍事的価値が乏しいとし、米欧がウクライナに戦闘の軸を東部から南部に移すよう促していると報道。米ブルームバーグ通信も2日、米欧がウクライナに対し、米欧製戦車の実戦投入など反攻の条件が整うまでは戦力の損耗を抑える必要があり、バフムトの放棄も検討すべきだと助言していると報じた。
ただ、ウクライナにとって、約半年間にわたって激戦が続くバフムトは抗戦の象徴的存在となっている。ゼレンスキー氏はバフムトの放棄によりウクライナ軍の士気が低下する事態を避けたい思惑だとみられる。
ドネツク州全域の制圧を目指す露軍は最近、バフムト周辺の小都市ソレダルや周辺の集落を制圧したと相次いで主張。露軍はバフムトを包囲してウクライナ軍の補給路を断った上で同市を陥落させ、その後に州の中心都市クラマトルスク方面に進出する戦術を立てているとされる。