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おそるべし「機内安全ビデオ」の世界

先日、久しぶりに海外旅行に出かけた。前回、日本を離れたのは新型コロナウイルス禍が始まる前だったので、数年ぶりの海外。今回、移動に利用したのはマレーシア航空だったが、離陸する前に航空機内で流れる「安全ビデオ」の変貌ぶりに驚かされた。シートベルトの着脱方法や電子機器の使用制限などを紹介する5分前後の動画のことである。以前は客室乗務員が事務的に伝達事項を淡々と説明する無機質なイメージがあったが、今ではすっかりエンターテインメント仕様になっていた。

マレーシア航空の機内安全ビデオはミュージカル調で、コミカルな要素もふんだんに取り入れられていた。英国の人気ロックバンド「クイーン」の名曲として知られる『ボヘミアン・ラプソディ』のミュージックビデオをネタにした場面があったり、客室乗務員をはじめとした出演者が勢ぞろいし、アップテンポな曲に合わせて踊り出したり…。どれだけ伝達事項が頭に入ったかはさておき、興味深く最後まで視聴させていただいた。

そういうことがあって、帰国後、動画投稿サイト「YouTube」で検索してみると、ユニークな機内安全ビデオが次から次へと出てきた。ANA(全日本空輸)が一昨年11月末まで流していたビデオは日本伝統の「歌舞伎」がモチーフ。ニュージーランド航空は同国がロケ地になったファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの世界観を反映させた〝作品〟に仕上がっている。映画の予告編を見させられているようなクオリティーの高さに正直、うなってしまった。ニュージーランド航空には、いきなりフィットネスのレッスンが始まるビデオもあり、ユニークな機内安全ビデオのトップランナー的存在といえる。

ほかにも、本拠にしている国の観光名所を紹介したり、文化や風習を織り込んだり…。各航空会社とも利用者に関心を持って機内安全ビデオを視聴してもらえるよう、あの手この手の工夫を凝らしている。おそるべし機内安全ビデオの世界。海外旅行の際には、ぜひご注目を。(信)

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