春節(旧正月)を迎えた1月22日、地方都市の新年の様子を見ようと夜も明けぬうちに高速鉄道に乗った。列車が北京の駅を出発して間もなく、窓外からカメラのフラッシュのような光がひっきりなしに見えた。花火と爆竹だ。大気汚染防止のため近年、禁止や制限が広がっていたが、今年は一部都市が解禁に動いた。昨年末まで続いた厳格な「ゼロコロナ」政策で鬱積した気分を発散させようとの考えがあったようだ。

線路脇に続く畑などには、たき火のように何かを燃やす人々の集まりも多くあった。知り合いの中国人に聞くと、先祖の霊を供養するものだという。中国では新型コロナウイルスの感染爆発に伴い、死者も急増している。「今年は最近亡くなった人を弔う人も多かったと思う」と知人は沈痛な面持ちで話した。花火などにより生じたスモッグで窓外の光景はぼんやりと見えるだけで、それがこの世とあの世の境目を見ているような感覚を抱かせた。

その後、列車を降り、世界遺産に登録されている河南省洛陽市郊外の「竜門石窟」を訪れると、多くの観光客であふれかえっていた。感染対策の行動制限が無くなってから初めての春節とあり、春節連休に旅行する人が一気に増えた。再び現実に戻り、中国人の姿を見た思いがした。(三塚聖平)

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