東京都狛江市の住宅で大塩衣与(きぬよ)さん(90)が殺害された強盗殺人事件で、大塩さんの60代の長男が3日、産経新聞の取材に応じ、事件発覚当時の様子などを語った。「(母親は)平穏に100歳まで生きられるのではないかと思っていた。やっぱり許せない」。一連の広域強盗事件の犯行グループに対し、憤りをあらわにした。
長男によると、大塩さんが亡くなった1月19日、警視庁調布署から「強盗に狙われているのではないか」と連絡を受け、自宅に戻った。署員とともに扉を開けると、室内は乱雑に物色されていた。大塩さんは地下1階で亡くなっているのが見つかった。「おふくろは痛くて、怖かっただろう」
大塩さんは、周囲からも「90歳とは思えない」と言われるほど、活動的だった。長男によると、バスや電車を使ってスーパーに買い物に行ったり、週に2回ほど渋谷に出かけて友人と会ったりしていたという。
大塩さんはかつて、夫と品川区内ですし店を営みながら、長男と次男の2人を育てた。長男は「当時は貧乏だったけど、愛情たっぷりに育ててもらった」と感謝する。夫とは30年ほど前に死別。数年前に長男が大塩さんを狛江市の自宅に呼び寄せ、同居するようになった。自分のペースで過ごしながらもいつも「ちゃんと食事をとっているのか」と気遣ってくれたという。
亡くなってから2週間たつが、司法解剖などの影響で、葬儀はまだできていない。遺品を整理する中で、大塩さんが手作りしたマフラーなど色とりどりの編み物が60個ほど見つかった。長男も知らない大塩さんの一面だった。「おふくろは楽しみながら、過ごしていたことが分かった」と語る。残された編み物は親類に譲ったという。
大塩さんを襲った男らは、「闇バイト」に応募し、「ルフィ」などと名乗るフィリピンで収容中の男らに指示を受けて犯行に及んだとされる。「親を殺されて、許せないのは当然だ」。悔しさをにじませた。(橘川玲奈)