3日の節分にあわせ、一般家庭で食べられる機会が多い「恵方巻」。節分にその年の縁起の良い方角(恵方)を向き、太巻の寿司を丸かぶりする風習が大阪を中心とする関西地方であったことが由来とされる。冬の風物詩となったその恵方巻にも、値上げの波が押し寄せている。帝国データバンクの調査によると、今年の恵方巻1本当たりの平均価格は昨年から8・8%増の約900円に。使用される卵やのりなどの価格が高騰しており、おせち料理と同様に食材価格上昇の影響を受けた格好だ。
七福神にあやかり7種類の具材が主流
ウエブサイトの「All About『暮らしの歳時記』」のガイドを務める和文化研究家の三浦康子さんによると、「恵方はその年の福徳を司る歳徳神(としとくじん、年神様の別称)のいる方角のことで、毎年変わる」といい、今年は「南南東」となる。
三浦さんによると、「1990年代に入ると、コンビニエンスストアで『恵方巻』として販売されるようになり、全国展開されることになったことが(恵方巻を)決定的に広めることになった」と指摘。三浦さんは、恵方巻の食べ方として「縁が切れたり、福が途切れたりしないよう、包丁で切らずに丸ごと1本を無言で食べることが定着した」と話す。
農林水産省の公式サイトにある「うちの郷土料理」では、恵方巻の風習について「大阪に端を発するともいわれるが、起源や発祥は定かではない」と指摘。また恵方巻の特徴について、七福神にあやかって7種類の具材を使った太巻きが主流で、厚焼き卵、キュウリ、三つ葉、アナゴ、干し椎茸、かんぴょう、エビ、うなぎの蒲焼、のりが使用されることが多いとしている。
廃棄コスト削減へ広がる「予約販売制」
帝国データバンクでは、全国の大手コンビニや外食チェーン、スーパー、百貨店など計104社のうち、前年と価格が比較可能な五目・七目の恵方巻、マグロなど高級食材が入った海鮮恵方巻を対象に調査を実施(1本18センチ前後の商品が対象)。それによると、恵方巻の平均価格は前年比73円(8・8%)増の898円、海鮮恵方巻は前年比158円(10・7%)増の1633円とそれぞれ上昇していた。
平均価格が上昇した要因として、同社は「太巻きに用いられる卵焼きは鶏卵価格が大幅に上昇しているほか、不作による供給減で品薄感が出始めた干しのり、国産・中国産ともに供給減が続く味付けかんぴょう、アナゴなど原材料で価格の上昇がみられる」と分析。海鮮恵方巻でも、使用頻度の高い国産マグロの価格が前年から40%超の上昇となっているほか、サーモンなど輸入サケ・マス類の価格も大幅な値上がりが続いているという。
一方、調査では、対象となった企業の多くが、店頭やウエブによる恵方巻の予約制を導入していたことも判明した。同社は「数量限定の予約による受注生産は、大幅な売り上げ増加が見込めない半面、需要に見合った販売によって廃棄コストの低減につながるメリットがある」とした上で、「食材コストの抑制策として、予約販売制が定着していくか注目される」としている。(浅野英介)