「25歳ルール」をクリアし、今オフにメジャー移籍ならば年俸39億円超は間違いない-。今から身も心も憧れの世界に染まり、万全の準備を施そうとするのも当然の成り行きだ。
オリックスの絶対エース・山本由伸投手(24)が宮崎春季キャンプ初日の2月1日、ハーフパンツ姿でブルペンに入るや、捕手を立たせたまま24球を投げた。
「伸びのあるボールを投げられていますし、ここからまだまだですけど1つずつやっていけたら、たぶんいいものになるかなと思います」と話す右腕は、キレのある直球と同様に投球フォームの〝変貌〟でも周囲の注目を集めた。昨季まではノーワインドアップから左足を高く上げていたが、今年はすり足に。体重移動を意識して、より上半身主体での投球を披露した。
昨季までの2シーズンは18勝5敗(2021年)、15勝5敗(2022年)で連続の最多勝。2年連続で最優秀防御率(1・39と1・68)にも輝き、2年連続で沢村賞も受賞。まさに日本球界の大エースにのし上がった。にもかかわらず、投球フォームを変える意図はどこに…。本人にはモデルチェンジすることへの恐怖感は全くないそうだが、ある球界OBは〝由伸の考え〟をこう推察した。
「山本由は今オフにポスティングシステムを利用して大リーグに挑戦する考えだ。オリックスも昨オフに吉田正尚をポスティングでレッドソックスに送り出していて、山本由の希望も容認する方向。本人は当然、今シーズンも意識しているだろうが、その先にも意識が行っている。すり足投法はメジャーのマウンド対策の意味があると思う」
大リーグ移籍後は硬くて滑りやすいマウンドが待っている。過去に多くの日本人投手が悩まされたメジャー仕様のマウンドに適応するには、上半身により比重を置く投球フォームへのチェンジが求められる。キャンプ初日に披露した〝すり足投法〟は将来のメジャー移籍を想定した上での試行錯誤…という見立てだ。
山本由は今年の8月17日の誕生日で25歳だ。ポスティングシステムの日米野球協定にある「25歳ルール」をクリアする。25歳未満でもポスティングの申請は可能だが、メジャー契約はできない。日米野球協定では25歳以上で、かつ大リーグが認定する米国外のプロ野球で6シーズン在籍していないとメジャー契約は禁止されている。元々はキューバ選手対策でMLB(大リーグ機構)とMLB選手会が作った規定だが、大谷翔平投手がポスティングする直前、〝大谷対策〟で日米野球協定に加えられた。
山本由は今季終了後には25歳でオリックス在籍7年を終える。「25歳ルール」をクリアし、メジャー契約を勝ち取れる。そして、現時点での大リーグ30球団の評価は凄まじい。昨オフ、千賀滉大(こうだい)投手がソフトバンクから海外フリーエージェントでメッツに移籍。条件は5年総額7500万ドル(約102億円)。オリックスからもポスティングシステムでレッドソックスに移籍した吉田正尚外野手が5年総額9000万ドル(約124億円)。両者ともに巨額契約だったが、山本由には早くも2人をしのぐ1年39億円超の〝価格〟が噂されている。
代理人の「ワッサーマンメディアグループ」のジョエル・ウルフ氏とは密接に連絡をとっていて、様々なポスティング対策をアドバイスされているとも聞く。絶対に故障しないことや、先発した試合についての投球制限などが含まれている模様だ。山本由はオリックスのリーグ3連覇、連続の日本一に向けて懸命に腕を振り続けるだろう。その先にある夢のような金額…。2016年にドラフト4位で入団した右腕は輝かしい世界の扉のノブに手をかけている。(特別記者)