棋士の加藤一二三さんは盤面を相手側から眺めることで状況を捉えなおし、局面の打開を狙ったという。前途多難な地球温暖化対策でも、そんな思考法が役立つかもしれない。大阪湾岸にある研究施設で、厄介者の二酸化炭素(CO2)を生かす技術開発が進められている。
「逆転させた、ということ。以前からある技術がもとになっています」。大阪ガスエネルギー技術研究所(大阪市此花区)SOECメタネーション開発室の朝倉隆晃室長が、手のひらに少し余るほどの正方形の金属板を見せてくれた。CO2と水(H2O)を主原料に電気を使って燃料のメタン(CH4)ガスをつくるメタネーション技術の主要部材。固体酸化物形電解セル(SOEC)という。
メタンを主成分とする都市ガスを原料に、CO2を排出しつつ電気と熱エネルギーを作る家庭用燃料電池「エネファーム」を逆転させた技術だ。日本ガス協会によると、エネファームは昨年度末までに国内で43万台強を売り上げた。そこで培ったノウハウが、革新的とされるSOECの研究開発に生かされているという。