未来のバレンタインに贈るのは、チョコではなくカニ 「ブラックサンダー」が渋谷で妄想博覧会

有楽製菓が展示する「クラッブサンダー」=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文撮影)
有楽製菓が展示する「クラッブサンダー」=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文撮影)

人気チョコバー「ブラックサンダー」を製造・販売する有楽製菓(東京都小平市)は3日、バレンタインの未来の形を予測・表現するイベント「B級バレンタイン未来博」を東京・渋谷駅構内の「PickUpランキン 渋谷ちかみち」でスタートした。地球温暖化などを反映し、バレンタインに渡すモノから求愛のためのコスチュームまで勝手に妄想。チョコレートの代わりに、「愛と平和の象徴」となるカニがプレゼントになるなど奇想天外な未来像を描く。いささか暴走気味だが、同社はチョコレートは幅広い層から需要があり、市場は成長の余地があると期待する。

温暖化でカカオ絶滅寸前…「クラッブサンダー」に改名

20XX年。地球温暖化が深刻化し、チョコレートの原料となるカカオの木は絶滅寸前だ。バレンタインは「愛と平和」を象徴する日として、希少となったチョコレートの代わりにカニを贈るようになる―。

会場では、普通の菓子メーカーが考えそうにない仰天の未来像が示されている。

なぜカニを贈るのか。ブラックサンダーの「ブラック」を逆さに読むと「クッラブ」で、カニを意味する英語「クラブ」に近い。カニはハサミが「ピースサイン」の形をしており、「ラブ&ピース」の象徴となる―というわけだ。「ブラックサンダー」は改名し、「クラッブサンダー」になるとも予測する。

会場に設けられた「ガチャガチャ」を使った抽選会はハズレがなく、賞品の1等は「カニ缶」。2等は「クラッブサンダー」の限定パッケージ商品(中身は通常のブラックサンダー)で、3等にはブラックサンダーを用意した。

スポーツ、コスチュームも楽しむ

「フライングカニディスク」(手前)と「クラブグラブ」=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文撮影)
「フライングカニディスク」(手前)と「クラブグラブ」=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文撮影)

若者の恋愛離れや少子化、デジタル化によるコミュニケーション不足がさらに深刻化するとも予測し、バレンタインに合わせて楽しむ未来のスポーツ「カニスビー」も紹介。フリスビーと同じ要領で、カニを渡す側が「フライングカニディスク」を投げ、もらう側がカニのハサミを模した「クラブグラブ」で受け取るというものだ。

有楽製菓が展示する「求カニスーツ」=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文撮影)
有楽製菓が展示する「求カニスーツ」=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文撮影)

バレンタインに合わせた未来のコスチュームとして、求愛活動ならぬ「求カニ活動」をする際に身にまとう「求カニスーツ」も展示。相手の居場所や情報、自分の体調を教えてくれる「AR(拡張現実)グラス」や、心音計を搭載してときめきの感情をARグラスへ伝える「プロテクトジャケット」などの技術が詰め込まれているという。

伸びる余地あり、カニに負けず

有楽製菓の河合辰信社長はイベントの狙いについて、「バレンタインを誰もが気軽に楽しんでほしいという思いを込めた」と説明。名称の「B級」には「ブラックサンダー」と「ばかばかしい」の両方の「B」を掛けた。

有楽製菓の河合辰信社長=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文)
有楽製菓の河合辰信社長=2月3日、東京都渋谷区(宇野貴文)

ブラックサンダーブランドはラインアップが充実し、幅広い層から人気がある。パソコンやスマートフォンを操作しながら食べられるチョコバーならではの利点も支持され、令和4年7月期の累計出荷金額は100億円を突破し、過去最高を更新した。

河合社長は「昔と違って、チョコレートは70~80歳代も食べており、消費者の年齢が広がっている」と指摘。1人当たりの年間消費量は欧州で10キロだが、日本は2キロにとどまっており、「伸びる余地がある」という。

「カニは好き」という河合社長だが、チョコレートがカニに取って代わられる事態が現実に起きることは、しばらくなさそうだ。(宇野貴文)

「B級バレンタイン未来博」は2月4日まで。無料で入場できる。



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