同盟が成立する条件は何かと問われたとき私は、第1が共通の仮想敵国が存在する、第2が価値観を共有する、第3が二国間は経済摩擦などが存在してもなるべく少ない―の3つだと信じてきた。戦後の日本には本格的同盟論はなく、軽武装・経済大国の路線を「吉田ドクトリン」と称するなどの見当違いの考え方が政・財・官、言論各界に満ち満ちていた。
健全な日米同盟への一歩
政界でこの路線の中心を担ってきたのは自民党の宏池会で、現会長は岸田文雄首相だ。吉田ドクトリンは吉田茂元首相とは無関係の言葉だが、一人歩きして、米国からの防衛費の増額要求をいかに巧みにかわすかが有能な政治家または外交官であるかのような状況が続いてきたと思う。