ミャンマーは1日でクーデターから2年を迎えた。混迷が収束する兆しはない一方、民主派弾圧を続ける国軍では脱走兵が増えている。「罪のない市民に銃口を向けることはできない」。タイ北西部の国境沿いの町に逃れた兵士たちが取材に応じ、国軍を追い込むため、脱走兵の受け入れ態勢や支援の強化が急務だと訴えた。
「軍は国民のためにあり、総司令官のためのものではない。情けない」。ミントゥンナイン中尉(25)=仮名=はこうつぶやき、トップのミンアウンフライン総司令官を批判した。約2カ月前、研修の帰り道に隙を見て脱走。国境の川を渡ってタイに逃れた。
ソートゥーアウン中尉(26)=仮名=も国軍の残忍さに耐えられなかった。最大都市ヤンゴンで、デモ隊が逃げ込んだとされる民家を銃撃した。突入すると、そこにいたのは10代の男女で、血を流す女性を男性が泣きながら抱えていた。デモ隊の姿はなかった。
まだ息のあるデモ参加者は、頭に袋をかぶせ手足を縛って川に流した。ドラム缶の盾を持ったデモ隊と相対した際は、射殺して遺体を橋の上から川に捨てた。自ら手出しはしていないが「市民を守り市民の憧れになる夢を持って軍に入ったのに、ただの人殺しになってしまった」と悔やむ。
警察官の制服を着てデモ隊制圧に当たれと命令されたのはチョーミントゥン軍曹(30)=仮名。同僚らは「猟師が獲物を狙うように」デモ隊に銃を向けた。「こんなに殺した」と自慢する者も。
「もう市民を撃ちたくない」。2021年4月に脱走し、少数民族武装勢力の協力を得て国境の川を渡った。現在は軍や警察からの離脱者を支援する団体の下で、自らも活動に従事する。団体はこれまでに約280人の手助けをしてきた。国軍から除隊許可を得るのはほぼ不可能。耐えられなくなれば脱走する以外に選択肢はないが重罪だ。逃れた兵士らは国軍の追っ手やタイ当局から身を隠して生活しなければならない。クーデター以降、国軍を脱走した兵士は数万人にも上るとされる。
支援団体の男性(43)は、国軍が最も恐れるのは脱走兵だと指摘する。拷問や殺害の映像などの証拠を持っているからだ。脱走兵の増加で国軍の兵力は急速に落ちているといい「脱走した兵士の支援は平和的で必ず勝利につながる」として、日本政府を含む国際社会に協力を呼びかけた。(共同)