フィリピン、4容疑者関与被害は60億円以上 同時送還は断念か

2日、記者団の取材に応じるフィリピンのレムリヤ司法相(森浩撮影)
2日、記者団の取材に応じるフィリピンのレムリヤ司法相(森浩撮影)

【マニラ=森浩】全国で相次いで発生している強盗事件を巡り、フィリピンのレムリヤ司法相は2日、警視庁が強制送還を求めている犯行の指示役とされる日本人特殊詐欺グループ4人=フィリピンの入管施設で拘束中=のうち、2人を先行して送還する可能性があると述べた。ほか2人は別事件の裁判で、送還の前提となる裁判の取り消しが認められなかった。来週にも4人を一斉送還する方向で調整していたが、時期は不透明となった。4人が関わったとされる特殊詐欺の被害額が60億円以上であることも判明した。

この日、裁判があったのは、渡辺優樹容疑者(38)と小島智信容疑者(45)。2人はともに「女性や子供への暴行罪」で告訴され、裁判が行われている。フィリピン司法省は、送還時期を遅らせるための虚偽の告訴に基づく裁判と断定しており、検察を通じて公訴の棄却を求めていたが、この日の棄却はなかった。次回審理は7日に行われる予定。

フィリピン側は8日のマルコス大統領の訪日前に4人全員の身柄を移送したい考えだが、実現は困難な見通しだ。レムリヤ司法相は裁判結果を受けた会見で「残る2人が先に送還されるだろう。時期は未定だ」と発言。4人同時に移送する方針にこだわらない姿勢を示した。

日本の警察当局は来週中にも送還を受ける方向で調整。4人には強盗事件の指示役とされる「ルフィ」や「キム」らが含まれるとみられ、警視庁は移送の準備が済み次第、捜査員を派遣するなど態勢を整える。

先行で送還される可能性があるのは、今村磨人(きよと)(38)と藤田聖也(としや)(38)の両容疑者。警視庁は渡辺容疑者がリーダー格だったとみている。

移送後は特殊詐欺事件について調べるほか、全国で発生している強盗事件との関連についても捜査を進めるもようだ。

移送手続きには通常、最低でも30日は必要とされるが、事案の重要性や8~12日にフィリピンのマルコス大統領が訪日し、岸田文雄首相と会談することを鑑み、早期移送で調整が進められている。

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