海底のレクイエム

ギゾ島のF6F-3ヘルキャット戦闘機

グラマンF6Fヘルキャットは、グラマン社(現ノースロップ・グラマン社)が開発したアメリカ海軍の艦上戦闘機で、1942(昭和17)年に初飛行、2000馬力級の強力なエンジンを持つ機体として空母機動部隊に配備され、日本陸海軍戦闘機を圧倒した。本機は1万2000機以上が量産され、F6F-3は初期生産型である。

F6F-3にはプラット・アンド・ホイットニーR-2800-10が採用されている。これは先の大戦で傑作といわれるエンジンの一つで、最高出力は2000馬力に達している(戸村裕行撮影、2019年1月)
F6F-3にはプラット・アンド・ホイットニーR-2800-10が採用されている。これは先の大戦で傑作といわれるエンジンの一つで、最高出力は2000馬力に達している(戸村裕行撮影、2019年1月)

ソロモン諸島・ギゾ島周辺には、多くの航空機が海底に眠っている。

今回はその中の一機で、水深10メートルと比較的浅い場所に沈んでいるアメリカ海軍グラマンF6F-3ヘルキャットをご覧いただきたい。

ソロモン諸島の陸上基地には、当時最新鋭機だったF6F-3を装備したアメリカ海軍の戦闘機隊が1943(昭和18)年8月から配置されており、ラバウルやバラレへの攻撃にも参加し、大きな戦果を報告している。

取材協力 旅行会社PNGジャパン(ホームページはこちら

カウリングのパネルが失われている他は大きな損傷もなく、ほぼ全体の外観が保たれている(戸村裕行撮影)
カウリングのパネルが失われている他は大きな損傷もなく、ほぼ全体の外観が保たれている(戸村裕行撮影)
風防が開いているので内部を見ることが出来るが、座席は上部を残してほとんどが失われており、左右の座席支柱が見えている(戸村裕行撮影)
風防が開いているので内部を見ることが出来るが、座席は上部を残してほとんどが失われており、左右の座席支柱が見えている(戸村裕行撮影)
主翼にはコルト・ブローニングM2、12.7ミリ機関銃が、片翼に3梃ずつ装備されている。弾数は各銃とも最大400発の搭載が可能だった(戸村裕行撮影)
主翼にはコルト・ブローニングM2、12.7ミリ機関銃が、片翼に3梃ずつ装備されている。弾数は各銃とも最大400発の搭載が可能だった(戸村裕行撮影)
F6F-3の胴体は上下の幅は大きいのだが、左右の幅はエンジンに合わせて絞られているため、この角度から見るとかなり精悍な形状に見える(戸村裕行撮影)
F6F-3の胴体は上下の幅は大きいのだが、左右の幅はエンジンに合わせて絞られているため、この角度から見るとかなり精悍な形状に見える(戸村裕行撮影)

水中写真家・戸村裕行

1982年、埼玉県生まれ。海底に眠る過去の大戦に起因する艦船や航空機などの撮影をライフワークとし、ミリタリー総合誌月刊『丸』にて連載を担当。それらを題材にした写真展「群青の追憶」を靖國神社遊就館を筆頭に日本各地で開催。主な著書に『蒼海の碑銘』。講演、執筆多数。

雑誌「丸」
昭和23年創刊、平成30年に70周年迎えた日本の代表的軍事雑誌。旧陸海軍の軍 艦、軍用機から各国の最新軍事情報、自衛隊、各種兵器のメカニズムなど幅広 い話題を扱う。発行元の潮書房光人新社は29年から産経新聞グループとなった 。毎月25日発売。

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