みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは2日、米連邦準備制度理事会(FRB)が1日の連邦公開市場委員会(FOMC)で主要政策金利の0・25%引き上げを決めたことについて、日本経済に与える影響はプラスとマイナスが「拮抗(きっこう)している」と分析した上で、円高が進んだ場合には輸出に逆風になると指摘した。
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多くの市場参加者が予想した通り、米連邦準備制度理事会(FRB)は今回の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の引き上げ幅を2会合連続で縮小した。パウエル議長は記者会見で、物価に関し「ディスインフレ(インフレ率の低下)」という言葉を何度も繰り返し、歓迎していた。昨年末以来の(株価の上昇など)金融環境の改善で引き締め効果が失われているのではないかとの質問に対し、特に懸念を示すことはなく、全体としてリラックスして話していた印象だ。
利上げに積極的な「タカ派」姿勢は見えず、利上げに慎重な「ハト派」寄りの発言がかなり多かった。とはいえ、労働市場の需給は引き続き逼迫(ひっぱく)しており、インフレに対する勝利宣言は時期尚早であるとクギを刺す場面もみられたほか、サービス価格についても注視する必要性を強調した。
米国が(これまで想定された深刻な景気後退を回避して)経済のソフトランディング(軟着陸)に成功すれば、世界の経済に良い影響が及ぶだろう。日本にとっても懸念された外需の減退が和らぐことで、輸出の増加を通じて企業活動が活発化すると期待される。
とはいえ、懸念もある。FRBは今後、利上げを停止し、今年第4四半期(10~12月)には景気刺激に向けて利下げに転じると予想している。日米の金利差が縮小することで運用に有利な円が買われ、円高ドル安が進めば、今度は輸出に逆風が吹いて日本経済の減速要因にもなりかねない。