韓国の寺、逆転敗訴 対馬仏像で韓国高裁 日本側所有権認める

観音寺の長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」=2013年1月、韓国・大田(聯合=共同)
観音寺の長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」=2013年1月、韓国・大田(聯合=共同)

【ソウル=時吉達也】長崎県対馬市の観音寺から韓国人窃盗団が韓国に持ち込んだ仏像を巡り、「数百年前に倭寇に略奪された」と所有権を主張する韓国の浮石寺(プソクサ)が像を日本に返還せず引き渡すよう韓国政府に求めた訴訟の控訴審判決で、韓国の大田(テジョン)高裁は1日、浮石寺の主張を認めた1審判決を取り消し、観音寺の所有権を認めた。

判決は、仏像の日本返還を巡って司法手続きとは別に、韓国政府が文化財に関する国際協約などを考慮すべきだと付言。外交を通じ韓国に返還されるべきだとの立場をにじませた。浮石寺側は判決後、「発掘調査をしてでも(新たな)証拠を探す」などと述べ、上告する方針を表明した。

問題となった仏像は長崎県の指定有形文化財「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」。2012年10月に盗まれ、韓国捜査当局が翌年窃盗団を摘発し仏像を回収した。17年1月の1審判決は、仏像が「略奪や盗難など正常でない形で対馬に渡ったものとみられる」と判断、浮石寺の所有権を認める判決を言い渡していた。

高裁判決はこれに対し、仏像が制作された14世紀当時に所有権を保有していたことが文献で確認された浮石寺が、現在の浮石寺と同一の寺院だとする証明が不十分だと指摘。原告の所有権継承を認めなかった。

さらに、仏像が日本に渡った経過については「倭寇による略奪をうかがわせる相当の状況証拠がある」とした上で、不正な搬出があった場合でも、日韓の民法上の時効が成立していると判断。現在の所有権は観音寺側にあると認定した。

仏像は現在、大田の国立文化財研究所に保管中。韓国文化財庁は14年、像が日本に渡った経緯を調査し「略奪された蓋然性は高いが、断定は困難だ」と結論付けていた。

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