主張

予算委と少子化 「児童手当」に終始するな

衆院予算委員会では、防衛力の強化策とともに少子化対策が焦点となっている。特に児童手当の支給対象の範囲拡大や所得制限の撤廃が論じられている。

だが、少子化対策は児童手当の拡充だけではないはずだ。少子化の要因には、子供を産み育てる経済力への不安のほか、働き方の変化を背景にした未婚化、晩婚化の進展がある。多面的な議論が欠かせない。

例えば、高等教育の費用負担軽減や夫婦双方での育児と仕事の両立支援、保育の質の向上など論点はいくらでもある。結婚前から子供が自立するまでの間に、どのような支援が必要かを体系立てて議論する必要があろう。

日本は子育て支援に対する公的支出が少ない。令和元年度の子育て政策を含む「家族関係社会支出」は、国内総生産(GDP)比で1・74%だ。出生率が高いフランスは2・73%、スウェーデンは3・42%である。

政府は3月末までに対策のたたき台を取りまとめる方針で、岸田文雄首相は予算委で「内容の具体化に取り組んでいる」などと慎重に言葉を選ぶケースが目立つ。どんな対策を検討中なのかを説明しなければ議論は深まるまい。

財源をめぐる議論も欠かせない。負担増に直結するためか、与野党双方からあまり聞かれないのは残念である。首相は6月の経済財政運営指針「骨太の方針」の策定までに、子供関連予算の倍増に向けて大枠を提示する方針でいるため、踏み込んだ答弁を避けているのではないか。財源論抜きの政策は画餅になりかねない。

政府・与党内には年金、医療、介護、雇用の各保険財政から拠出金を集めて基金にし、対策に充てる構想が浮上している。だが、負担と受益が直結するのが保険の考え方だ。これだと、育児に携わっていない世帯などから異論が出る可能性がある。

その一方で、負担の中心が現役世代である保険料を対策に充てることは、全ての世代で支え合う「全世代型社会保障」の理念に合わないとの指摘もある。

少子化の克服には息の長い取り組みが必要だ。出生率が多少上向いても、出産し得る女性が減少傾向にあるため、出生数は一朝一夕には改善しない。対策が長期にわたることを前提に、安定財源の確保策の検討が重要である。

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