【ワシントン=大内清】トランプ米前大統領は31日までに、自身のインタビュー音声がオーディオブックの形で不正に利用されたなどとして、歴代政権の内幕を描いた報道で知られる米紙ワシントン・ポストの名物記者ボブ・ウッドワード氏と同氏の著作を扱う出版社などを相手取り、約5千万ドル(約65億円)の損害賠償を求めて南部フロリダ州の連邦地裁に提訴した。
ウッドワード氏は昨年10月、トランプ氏の就任前と在職中に行った20回のインタビュー音声を収めたオーディオブック『トランプ・テープス』を発表。訴状でトランプ氏側は、一連のインタビューは著作1冊のためという条件で受けたもので、それ以外の形で公表しないよう繰り返し念を押したなどと主張している。
提訴は1月30日付。ウッドワード氏側は「インタビューはすべてトランプ氏の同意の下で行われた」として争う姿勢を示している。
トランプ氏は同日の声明で、ウッドワード氏のオーディオブックは「私を悪くみせようという露骨な試みだ」と主張し、「フェイクニュースと偽情報を操る悪の勢力と戦う」と述べた。
ウッドワード氏は1974年のニクソン大統領(当時)辞任につながったウォーターゲート事件の報道で知られる。トランプ政権の内幕を描いた『FEAR(恐怖)』を2018年に、『RAGE(怒り)』を20年に相次いで発表。21年9月には、同年1月に起きたトランプ支持者による連邦議会襲撃事件に至る経緯などを検証した同僚記者との共著本『PERIL(危難)』が出版されている。