大手電力10社の令和5年3月期連結決算の業績予想で、中部電力以外の9社の最終損益が赤字に陥る見通しとなった。ウクライナ危機の長期化で火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)や石炭などの価格高騰に加え、一時為替が円安に大幅に振れたことも響いた。赤字額の合計は1兆円超となる見込みだ。
「ウクライナ情勢で、かなり燃料価格が上がっている。徹底的な合理化などで収支改善を図りたい」。1日、4年4~12月期連結決算を発表した東京電力ホールディングス(HD)の山口裕之副社長は厳しい表情で語った。
東電HDの4年4~12月期の連結最終損益は過去最悪の6509億円の赤字だった。5年3月期も3170億円の赤字見通しで、10年ぶりの最終赤字転落が濃厚だ。
燃料価格高騰は電力各社の経営に大きな影響を与えている。1日までに4年4~12月期連結決算を発表済みの9社のうち、北陸と中国がそれぞれ、900億円と1740億円の最終損益の赤字を見込む。いずれも過去最悪だ。東北と四国もそれぞれ、2200億円、250億円と過去2番目の赤字を予想している。
業績悪化を受け、東北、北陸、中国、四国、沖縄の5社は4月から、東京、北海道の2社は6月から家庭向け電気料金(規制料金)の値上げを申請している。各社は苦境を訴え、値上げに理解を求めて業績改善を見込むが、利用者の反発は根強い。国が最終的に認可する値上げ幅は、各社の申請時よりも圧縮される可能性がある。(永田岳彦)