NTTコミュニケーションズと横河ソリューションサービスは、石油化学プラントなどの操作を人工知能(AI)を使って自動化するシステム「オートパイロット」を開発し、月内に提供を開始する。化学プラントの安全で効率的な運用に欠かせない熟練運転員の減少を見据え、AIの支援で低コスト化や品質のばらつき解消を図る。両社は、令和5年度に国内の化学メーカーなど数十社への導入を目指す。
センサーで取得した温度や圧力、運転員の過去の操作履歴などをAIが学習し、プラントを自動運転する仕組み。操業中は運転データを毎分ごとに読み込んで再学習し、状況の変化に応じてプラントを制御する。運転員の技量次第で原料や燃料の使用量がばらついてコストが上振れることもある。自動化で手動での操作を減らし、品質を安定させると同時にコスト削減にもつなげる。
AI自動運転の制御範囲は事前に設定する。範囲外の事象については「未知の状況」と認識し、手動に切り替わる。このため、運転員による操作への関与は残る。
昨年12月に実施した、JNC石油化学(東京都千代田区)の市原製造所(千葉県市原市)での実証実験では、AIによる自動運転が運転員の操作時と比べ、最適な運転かどうかを測る指標値が目標値の近くで安定したという。
横河ソリューションサービスが企画・販売し、NTTコムが開発や保守・運用を担う。既に6社への導入が見込まれている。NTTコムの担当者によれば、化学メーカーだけでなく、水処理プラントを扱う企業なども関心を示しているようだ。
労働人口減少による人材確保の問題はあらゆる業種の共通テーマ。両社は今回のシステムを多くの業種へ展開できるとみている。人の判断がものをいう植物工場といった農業分野への導入なども視野に入れる。(日野稚子)