主張

被害者の心情伝達 真の反省引き出す制度に

犯罪被害者や遺族の心情を、刑務所や少年院など矯正施設の職員が聴取し、加害者の処遇や生活指導などに生かす新制度が年内に施行される。

被害者が希望すれば、聴取内容を加害者本人に伝えることもできる。

矯正施設が被害者と直接関わる制度はこれまでなかったが、新制度の目的は、被害者の思いをくんだ指導や教育を通じて加害者から真の反省を引き出すことにある。

真の反省は、自分が犯した罪と向き合うことから始まる。その反省が再犯・再非行の防止につながるよう、法務省は組織を挙げて準備を進めてほしい。

被害者が法務当局を通じて、意見や心情を伝える制度は、仮釈放や仮退院の可否が審理される段階にある加害者や保護観察中の加害者に対しては存在していた。

このため、被害者側からは「仮釈放が決まった、された後では遅すぎる」「矯正施設にも同様の制度を設けてほしい」といった意見が寄せられ、法制審議会での議論を経て、加害者が刑務所や少年院に入った段階から心情を伝えられるよう制度が改められた。

法務省によると、対象となる全国の矯正施設に聴取を担当する直接の担当者を置く。希望する被害者は施設に聴取を申し出たうえで担当者に悲しみなどの感情や現在置かれている状況、処遇への意見などを伝えることができる。

聴取内容は、原則として速やかに加害者本人に伝達される。さらに、加害者側がどう受け止めたかを被害者側に伝えることも検討されている。

大切なのは、被害者が安心して話せる環境づくりだ。職員の多くは被害者と接した経験がない。デリケートな心情にある被害者の話を丁寧に聞き、思いを引き出す力が求められる。

被害者が居住する地域と加害者の収容施設が遠い場合、被害者側の負担とならない聴取場所を設定することも重要な課題だ。

聴取内容が実際の処遇にどう生かされたのか。これを被害者に知らせる仕組みもあってほしい。

少年犯罪の被害者らは、加害者だけに向けられていた職員の意識や関心が被害者にも向けられることで、施設内での教育や指導がどう変わるか注目している。

被害者の心情回復と加害者の真の更生の双方を実現させる法務行政に期待したい。

会員限定記事会員サービス詳細