「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されてから今年で10年。日本政府が次の候補として申請し、来年秋にも登録の可否が審議されるとみられているのが「伝統的酒造り」だ。
わが国が世界に誇るこの素晴らしい文化に共通して欠かせないのが、平成17年に全遺伝情報(ゲノム)が解読され、翌年に日本の国菌(こっきん)に認定された「麴(こうじ)菌」。発酵を助ける微生物の一つである「カビ」である。東南アジアや東アジアにも、穀物の発酵に必要なカビを繁殖させた「麴」は存在するが、麴菌は日本の固有種であり、麴の作り方も異なるのだという。
みそやしょうゆ、みりん、日本酒などの発酵食品の製造はいずれも、麴づくりから始まるが、酒蔵で作るこうじ(麴)と、みそづくりなどで使われるこうじ(糀)は全く違うということを、どぶろくの醸造・販売も行う異色の糀屋さんに教わった。酒蔵に12年間勤務後、糀屋に転身し、現在は滋賀県長浜市で「ハッピー太郎醸造所」を営む池島幸太郎さん(45)だ。