衆院選挙区定数「10増10減」をめぐり、公明党が候補者擁立の準備を着々と進めている。自民党との調整を待たずに公表した新東京29区と新広島3区に加え、東京、埼玉、千葉、愛知の空白区での公認も近く決定する構えだ。公明の「実効支配」(自民選対関係者)ともいえる動きに自民は神経をとがらせており、両党の調整は難航を極めそうだ。
「わが党が(候補を)立てるところは自民の協力を得ながら議席を確保する。かみ合った対応が重要だ」
公明の山口那津男代表は31日の記者会見で、自民との調整状況を問われ、こう述べた。
公明は10増10減に伴う新東京29区に岡本三成元財務副大臣、新広島3区に斉藤鉄夫国土交通相を擁立する方針を決め、1月25日に発表した。
公明側は自民の茂木敏充幹事長らの了承は得ていると説明するが、自民執行部の一人は「公明候補の推薦を決めたわけではない」と不快感を示す。茂木氏は同30日の記者会見で「それぞれの党で候補者調整を進めている段階だ」との認識を示した。
公明はさらに、定数が増える4都県での候補擁立を目指している。いずれも党幹部である石井啓一幹事長が埼玉で、高木陽介政調会長が東京で出馬する案などが浮上する。
比例得票に陰りの見える公明は、選挙区進出を党勢回復のカギとみる。同党関係者は積極的に擁立作業を進める理由について「自民も各選挙区の公認候補となる支部長を続々と決めている。こちらも動かなければ出遅れてしまう」と語る。
ただ、自民の理解を得るのは容易ではない。自民幹部は「定数10減に伴って自民の議席は減る。10増の都県でそれをカバーすべきなのに、3つも4つも公明に譲れない」と指摘する。公明の候補擁立が取り沙汰される愛知県の自民県連関係者は「選挙区を欲しいなんておこがましい」と憤る。
公明の要請を断り切れない事情もある。選挙区につき2万票ともいわれる公明の選挙応援がなければ、当選がおぼつかない自民候補が少なくないためだ。(石鍋圭)