【ロンドン=板東和正】 北欧のスウェーデンとフィンランドが目指す北大西洋条約機構(NATO)の早期同時加盟に逆風が吹いている。加盟国のトルコが、スウェーデンで起きたトルコへの抗議デモでイスラム教の聖典コーランの写しが燃やされたことに反発を強めているためだ。トルコのエルドアン大統領はフィンランドのみの加盟を認める可能性も示唆している。
北欧2国は昨年、NATO加盟を認められたが、正式加盟には全加盟国の批准が必要だ。だが、トルコは「テロリスト」とみなすクルド系活動家らの引き渡しなどをスウェーデンに対して求めており、まだ批准を終えていない。
クルド系住民が多く暮らすスウェーデンでは、エルドアン政権への抗議活動がたびたび発生。1月21日に首都ストックホルムで起きたデモでは、スウェーデン国籍も持つデンマークの極右政治家がトルコ大使館付近でイスラム教の聖典コーランの写しを焼却した。
スウェーデンのビルストロム外相はツイッターで「スウェーデンには表現の自由があるが、表明された意見を政府が支持しているわけではない」とデモと距離を置いた。だが、トルコは「われわれの神聖な書物に対する卑劣な攻撃」(外務省)と非難。2月に予定されていたスウェーデン、フィンランドとの協議を延期すると明らかにした。
1月29日には、エルドアン氏が「フィンランドには(スウェーデンと)異なるメッセージを送るかもしれない」と述べ、フィンランド加盟のみを対象に批准を進める可能性に言及した。
これに対して、フィンランドのハービスト外相は30日、「スウェーデンとともにNATOに加盟することを強く望んでいる」と改めて同時加盟を目指す考えを表明した。ただ、ハービスト氏は24日、スウェーデンの手続きが長期停滞した場合、「状況を評価しなければならない」と発言。すぐに撤回したが、フィンランドの単独加盟の可能性をほのめかしたとみられた。