ウクライナ侵攻を支持せず出国したロシアの芸能人らへの締め付けが強まっている。今月、軍事作戦をちゃかした歌を公開した人気コメディアンを保守系団体が告発。ベテランや若手歌手も次々とやり玉に挙げられ、交戦長期化で高まる社会の閉塞(へいそく)感に拍車をかけている。
告発されたのはテレビのお笑い番組の常連で俳優、脚本家のセミョン・スレパコフさん(43)。自作の「子守歌」をユーチューブで公開した。3人の子供の母が、最年少の子は若すぎて戦場に行けず、2番目のIT技術者は欧州に逃げて「裏切り者になり」、「カフェラテとチーズケーキで国を売ったりはしない」と志願兵になった長男は戦死したと嘆く内容だ。公開後約4日で視聴回数が120万を超え、「天才的」などとコメントが書き込まれた。
タス通信などによると、プーチン政権与党「統一ロシア」の下院議員が25日、現在イスラエルにいるとされるスレパコフさんの国籍剝奪を主張。保守派でつくる「国民歴史遺産保護基金」は、軍の信用失墜を禁じた刑法に違反するとして連邦捜査委員会に告発した。
ロシアでは昨年2月の侵攻後、テレビで活躍していた多くの芸能人が出国。有力紙コメルサントによると、政府系「第1チャンネル」でレギュラー番組を持っていた人気司会者イワン・ウルガントさん(44)や、女性歌手モネトチカさん(24)がモスクワなどで今年2月以降に予定していたコンサートは中止になった。2人とも作戦に反対を表明していたという。
ベテラン歌手ワレリー・メラッゼさん(57)も1月初旬にドバイのコンサートでウクライナ民族主義者のスローガンを口にしたとして批判を浴び、ロシア国内の公演が相次いで中止に追い込まれている。(共同)