日本銀行は31日、平成24年7~12月の金融政策決定会合の議事録を公開した。同年12月に自民党が政権を奪還し、日銀へ追加的な金融緩和を要請したことで、会合では25年1月に発表されることになる政府との共同声明や2%の物価上昇目標に関する議論が交わされた。一方、政府からの要求が増し日銀の独立性が揺らぐ中、白川方明(まさあき)総裁が「物価の安定は政府自身に振り返ってくる非常に重たい話だ」とくぎを刺す場面もあった。
日銀は24年2月の会合で「中長期的な物価安定の目途」として「当面は1%」を掲げることを決定したが、その後も政府からのデフレ脱却へ向けた要求は加速した。10月30日の会合には、当時与党だった民主党の前原誠司経済財政担当相が出席し「デフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続されるよう期待する」と要望を述べた。
12月16日の衆院選で自民党が政権の奪還を確定させると、日銀への追加緩和の要望はさらに強まった。安倍晋三総裁(当時)は12月18日、白川総裁と会談し、現在まで続く2%の物価上昇目標の導入と、政策協定の締結を検討するよう要請した。
翌19日からの会合で、各委員からは目標の見直しが必要との声が相次いだ。白川総裁は「中長期的な物価安定の目途について議論を深めていくことは非常に大事なことだ」と述べ、翌1月会合で具体的な議論を行うことを決めた。
一方で白川総裁は「(大量の国債買い入れにより)財政規律が失われることになってくると、長い目でみて物価の安定に対してかえって逆効果だ」とも指摘。「このことについて、政府においても認識されていることが大事だと思っている」と牽制(けんせい)しており、政府の要求と日銀の独立性のはざまで揺れ動いていた心情が浮かび上がった。