一昨年、昨年と、ヒューリック杯棋聖戦の観戦記を書くため千葉県に赴いた。昨年、対局場に向かうバスの待合室で藤井さんを見た瞬間、「雰囲気が違う」と感じた。
一昨年は対談もした。言葉遣いこそ成熟していても、まだ幼い印象だった。それが、昨年の待合室では凄みをまとっていた。幼さはまったく感じず、「10代の棋士」ではなく「大一番を前にした1人の棋士」だった。対局も凄みと気迫に満ちていた。
1年で何があったのだろう。一昨年の棋聖戦時は二冠、昨年は五冠と獲得タイトル数が増えた。自覚や周囲の期待、昨夏で20歳になったという年齢も相まって、凄みにつながったのかもしれない。