米韓国防相が会談 核の傘への疑念一掃図る

31日、ソウルの韓国国防省で会談を終え、李鐘燮国防相(右)と握手するオースティン米国防長官(韓国国防省提供・共同)
31日、ソウルの韓国国防省で会談を終え、李鐘燮国防相(右)と握手するオースティン米国防長官(韓国国防省提供・共同)

【ソウル=時吉達也】訪韓中のオースティン米国防長官は31日、韓国の李鐘燮(イジョンソプ)国防相とソウルで会談し、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を非難した上で「国際社会とともに断固として対応する」との共同声明を発表した。両氏は韓国国内で米国の「核の傘」の実効性を疑問視する声が広がりつつあることを受け、核兵器などによる拡大抑止の提供を通じて韓国の安全保障体勢を強化させていくとし、疑念の一掃を図った。

共同声明によると、両氏は2月中に、北朝鮮による実際の核攻撃を想定した合同机上演習を米国で行うことで一致。年内に実施予定の野外機動訓練の規模を拡大し、大規模な射撃演習も実施するとした。

会談後の共同記者会見でオースティン氏は「拡大抑止を提供する約束は鉄壁で堅固だ」と強調。ステルス戦闘機や空母の朝鮮半島展開をさらに拡大していく意向を示した。

米側が拡大抑止を強調する背景には、韓国国内で核武装論が台頭することへの危機感がある。1月30日に発表された韓国ギャラップの世論調査では、「韓国独自の核開発」への賛成が76・6%に上り、反対23・4%の3倍以上となった。

朝鮮半島有事の際に「米国が核抑止力を行使しないと考える」との回答も48・7%だった。北朝鮮のミサイル技術が向上する中、米国自身も標的となるリスクを負ってでも拡大抑止の約束を守るのか、懐疑的な見方が広がっている。

こうした中、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は1月11日、「北朝鮮問題がさらに深刻になった場合、韓国への戦術核配備や、韓国による独自の核保有もあり得る」と述べて波紋を呼び、米韓当局が「議論は全くない」(大統領府関係者)と火消しに追われる事態となった。

核をめぐる韓国国内の世論について、米CNNテレビは「韓国の核保有論は10年前は非主流だったが、今は中心的な論争になっている」と指摘。在韓米軍の駐留費用負担を問題視し、米軍撤収に言及したこともあるトランプ米前大統領が次期大統領選への出馬を表明したことも議論に影響していると分析する。

オースティン氏は、訪韓に合わせた聯合ニュースへの寄稿でも「(北朝鮮は)私たち米国または韓国のいずれかに挑戦すれば、米韓同盟全体に挑戦することを知っている」と米韓の結束を強調し、核武装論の沈静化を図った。

会員限定記事会員サービス詳細