一票の格差が最大2・08倍となった令和3年10月の衆院選を巡る訴訟で、最高裁大法廷は「合憲」と判断した。
改善の目安とされる2倍を超えていたが、人口に比例した議席配分方式「アダムズ方式」の導入を国会が決め、次期衆院選から適用されることを考慮した。格差是正が制度的に担保されており、合憲の判断は妥当である。
最高裁は最大格差が2倍超だった平成21、24、26年の衆院選を「違憲状態」と判断し、格差拡大の要因は、各都道府県に1議席ずつ配分したうえで、残りの議席を人口比で割り振る「1人別枠方式」にあるとみていた。
そこで国会は28年にアダムズ方式の導入を決めたが、令和3年選挙への適用は間に合わなかった。判決では合憲の理由を「是正が予定されている」などとしている。3年選挙の格差だけを見るのではなく、アダムズ方式という制度が持つ意味から判断したのは、理にかなっている。
もっとも、アダムズ方式に基づく区割りの見直しで、最大格差は1・999倍に縮小するが、2をわずかに下回ったにすぎない。地方から都市部への人口流入が進めば、再び2倍を超えるだろう。
立法府には、合憲判断にあぐらをかくことなく、不断の点検と見直しをすることが求められる。投票価値の平等は、憲法14条が定める「法の下の平等」に基づく民主主義の基本であることを、忘れないでもらいたい。
ただ、課題もある。次期衆院選ではアダムズ方式が適用されることで、都市部である首都圏4都県と愛知県で選挙区定数が10増し、宮城や和歌山など10県で各1減となる。都市部への人口流入が続けば、今後も都市部の定数は増え、地方は減ることになる。このため、自民党などからは「地方の声が届きにくくなる」と懸念する声が上がる。
格差是正と地方の声の反映という二律背反の課題に対する解決策を見いだすのは極めて難しい。
憲法43条は「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定めており、地域代表としての性格は求めていない。衆院と同様に一票の格差を巡る問題を抱えている参院との役割分担を踏まえた、憲法改正を含む抜本的な改革を、与野党は検討すべきである。