深刻な自然破壊進む…尖閣諸島、ドローン調査

ドローンから調査船に送られてきた映像をチェックする東海大の調査チーム=30日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島沖合(川瀬弘至撮影)
ドローンから調査船に送られてきた映像をチェックする東海大の調査チーム=30日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島沖合(川瀬弘至撮影)

崩れた山肌、むき出しの赤土…。わが国の領土でありながら誰も立ち入れない尖閣諸島(沖縄県石垣市)は、自然破壊が想像以上に深刻だった。

29、30の両日に行われた石垣市による尖閣周辺の海洋調査。市の委託を受けた東海大の研究チームが周辺海域の水質など基礎的なデータを収集したほか、産経新聞記者も同行取材し、魚釣島などを船上から視察した。

魚釣島では昭和53年に政治団体が持ち込んだヤギが繁殖し、草木を食べ尽くすなどの被害が指摘されている。今回の調査でも、ヤギの食害で山肌が所々露出し、崩落して土砂が海に流出している可能性がうかがえた。

初めて実施したドローンからの映像でも、とくに東側斜面の山肌がほとんど崩落している様子が見て取れた。海上を漂う漁具などのプラスチックゴミも目立ち、海岸に漂着して堆積している恐れもある。

公的機関の現地調査は、平成24年に東京都が、昨年には石垣市が実施し、今回で3回目だ。

いずれの調査にも参加した東海大の山田吉彦教授は「環境被害は確実に進んでおり、尖閣諸島の貴重な生態系が崩れつつある。具体策を講じるためにも、この現状を国民に知ってもらいたい」と話す。

今回、報道機関の同行が初めて認められた背景には、広く周知することで、本格調査への機運を高めたいとする狙いもあるようだ。

中国が海洋覇権政策を強化する中、尖閣諸島はこれまで、安全保障問題の中で語られることが多かった。革新勢力からは、中国を刺激するとして現地調査に反対する声も根強い。だが、「より考えなければならないのは環境問題だ」と山田教授は指摘する。

尖閣諸島周辺は古くから好漁場として知られているが、流出した赤土や漂着ゴミを放置すれば環境汚染がさらに進むことは必至だ。貴重な生態系を守るため、上陸調査を含む具体的対策が求められている。(川瀬弘至)

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