ウクライナのゼレンスキー大統領は29日のビデオ声明で、露軍が南部ヘルソン州の州都ヘルソンを一日中砲撃し、民間人3人が死亡、6人が負傷したと明らかにし、「テロだ」とロシアを非難した。一方、露軍が一部を占領下に置く南部ザポロジエ州の親露派武装勢力トップのバリツキー氏は同日、ウクライナ軍が州内の鉄道橋を砲撃し、露軍兵4人が死亡したと指摘。「民間インフラへの攻撃という犯罪だ」と主張した。
ロシアが昨年秋に一方的に併合を宣言したドネツク州とルガンスク州の東部2州では激しい地上戦が続く中、同じくロシアが併合を宣言した南部2州では砲撃の応酬が激化している。
ゼレンスキー氏やウクライナ保健省によると、ヘルソン市ではこの日、露軍の砲撃が病院や住宅、郵便局などに着弾。看護師や市民らが死傷した。ウクライナメディアによると、露軍は1月下旬以降、ほぼ毎日のようにヘルソン市や周辺地域に砲撃を加えている。
ヘルソン州では昨年11月、ウクライナ軍がヘルソン市を含むドニエプル川西岸地域を奪還。露軍はウクライナ軍の渡河を防ぐため、同川東岸地域からヘルソン市や周辺に砲撃を加えているとみられている。
バリツキー氏によると、ウクライナ軍の攻撃を受けた鉄道橋は、露軍が支配下に置くメリトポリ市の周辺に位置。同市の奪還を目指すウクライナ軍が露軍の補給路の遮断を狙って攻撃した可能性がある。
英国防省は29日、同国の主力戦車「チャレンジャー2」の操縦訓練を受けるため、ウクライナ軍の戦車兵が英国に到着したと発表した。英国は先に戦車14両の供与を発表。ウクライナは、米英やドイツ、欧州諸国から供与される主力戦車が将来的な反攻の原動力になると期待している。