港湾倉庫、銀座や六本木の「冷蔵庫」に 都心立地生かし高級食品保管・24時間配送

東運ウェアハウスが運用を始めた冷蔵倉庫「アーバンロジスティクスセンター」。上部に冷気が吹き出る冷蔵設備を設置。これを4基備えている=東京都港区(高橋俊一撮影)
東運ウェアハウスが運用を始めた冷蔵倉庫「アーバンロジスティクスセンター」。上部に冷気が吹き出る冷蔵設備を設置。これを4基備えている=東京都港区(高橋俊一撮影)

都心部に立地する古い倉庫が苦境から脱しようと新事業に乗り出した。自社倉庫に冷蔵設備を導入。高級日本酒やクラフトビール、チーズなど低温貯蔵が必要な酒や食品を保管し、東京の中心繁華街に近い立地を生かして飲食店向けに24時間体制で配送する。最新の自動化設備を導入した大規模倉庫が郊外に相次ぎ建設され、都心の古い倉庫は空きが増えており、都市部の倉庫の新たなビジネスモデルを目指す。

1月下旬から新事業を開始したのは、東京港近くで倉庫を運営する東運ウェアハウス(東京都港区)。港湾倉庫として、砂糖やデンプン、豆などの原材料を主に取り扱っているが、郊外の大型倉庫に押され、年々10%ほど売り上げの減少が続いているという。

巻き返しの手段として考案したのが、銀座や六本木など東京の中心繁華街から5キロ圏内にある立地を生かし、24時間配送という価値を加えた冷蔵倉庫への転換だった。

東京はレストランやバー(酒場)が世界でもっとも多い都市といわれる。こうした飲食店に利用してもらおうと、既存の倉庫の一角(95坪=約314平方メートル)に冷蔵設備を導入し、3~5度の低温で保管できる冷蔵倉庫に改造。「アーバンロジスティクスセンター」と名付け、飲食店が提供する酒や食品を保管し、飲食店側からの指示に応じて50分以内に店に届けるサービスを展開することにした。

倉庫の利用料金は、日本酒1ケース(一升瓶6本)当たり1日12円、18ケースが入るカゴ台車1台当たりでは月額1万円とする。配送は専門業者に委託する。飲食店は利用料や配送料を支払う代わりに、地代の高い繁華街の店舗内に大型の冷蔵設備を備える必要がなくなり、その分を客席などに充てられる。在庫を適正に管理することも可能になる。

一方、羽田空港にも近いため、日本酒の酒蔵や取扱業者の利用も想定している。羽田から航空便で海外に出荷したり、冷蔵倉庫の近くで試飲会を実施したりといった使い方もできるという。

冷蔵倉庫への改造費用は約6000万円。自己資金のほか、国の事業再構築補助金も活用し、冷蔵設備4基を設置したほか、壁や天井などに断熱材(発泡ウレタン)を吹き付けた。配送料も含め、3年後に1億円の売り上げを目指している。

都心に立地する中小規模の倉庫は、郊外に相次ぎ立地した大規模倉庫に顧客を奪われ、売り上げが減少している。このため、仕切りのない広い空間や、頑丈な構造など倉庫ならではの特長を生かし、ユニークなレイアウトを施したオフィスや、スタジオなどとして活用する例も増えている。

東運ウェアハウスは「先行きを考えると他と違うことをやらないと厳しい」(坂田淳司常務)と判断。消費地に近いという立地を生かし、24時間配送という価値を加えることで、倉庫としての生き残りを図る。(高橋俊一)

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