フィリピンの渡辺容疑者、暴行罪は送還逃れの虚偽か

渡辺優樹容疑者
渡辺優樹容疑者

【マニラ=森浩】全国で相次いで発生している強盗事件をめぐり、フィリピン司法当局が、犯行の指示役とされる日本人特殊詐欺グループのリーダー、渡辺優樹容疑者=同国の入管施設で拘束中=が訴追された「女性や子供への暴行罪」は、虚偽の告訴に基づく可能性が高いとみていることが30日、分かった。当局者が明らかにした。渡辺容疑者が施設外の妻に告訴させ、強制送還を逃れようとしたもようだ。

フィリピン政府は31日から日本側と渡辺容疑者らグループ4人の送還時期について本格的な協議を始める予定。移送手続きには通常では最低30日必要とされるが、比政府は2月上旬に予定されているマルコス大統領の訪日前に「問題を解決したい」との意向を示している。

フィリピンでは入管施設収容者が母国への強制送還を避けるため、外部協力者に告訴・告発させ、刑事司法手続きに入ることで身柄移送を先送りにする手口が横行している。

産経新聞が入手した告訴の記録によると、告訴状は渡辺容疑者の妻が2021年5月に提出しており、渡辺容疑者に「殴打された」などとしている。暴行の時期は不明。ただ、告訴状提出が渡辺容疑者の身柄拘束直後であることなどから、司法当局は送還を遅らせるために渡辺容疑者が妻に指示して告訴状を提出させた可能性があるとみている。フィリピン側は公訴が棄却できないか検討している。

同グループのメンバー、今村磨人(きよと)容疑者も暴行罪で訴追されていたが今月25日付で既に棄却された。このため、書類が整い次第、今村容疑者が渡辺容疑者よりも先に日本に移送されるとの観測も上がっている。

30日に記者会見したレムリヤ司法相は、「(送還は)4人全員同時かもしれないし、バラバラになるかもしれない」との見方を示した。また、レムリヤ氏は4人に通信機器を提供するなどして便宜を図った入管職員について、「違法な行為であり、責任を追及する」と強調した。

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