話の肖像画

歌手・石川さゆり<29>スキューバ、陶芸…そして母への感謝

小説家、水上勉さんの勧めで始めた陶芸は30年以上も続けている
小説家、水上勉さんの勧めで始めた陶芸は30年以上も続けている

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《きょう30日、65歳の誕生日を迎えた。元気である。その秘密は?》


特に何もしてないです。生活の中で、例えばお風呂に入っても呼吸の練習はできる、水圧がかかるから。一本下駄を履いて軽く歩く。楽しいじゃないですか、体のバランスが取れ、筋力もつく。お酒もそんなに飲むわけじゃない。たばこも吸わない。喉のケアのためにマスクをして寝たときもありましたが、朝起きたら絶対にしてない。いつ外したかもわからない。だから本当に何もしてない。体は強い方です。両親に感謝ですね。


《好奇心旺盛、アクティブな趣味が心身健康の源!?》


外に飛び出すのは好きです。一番凝ったのはスキューバダイビングです。娘とオーストラリアに旅行したのですが、コアラを抱っこしたり、自然をいっぱい堪能して、帰りに飛行機からふと外を見たとき、真っ青な空、下を見たら「ワッ、これグレートバリアリーフ? きれい!」。この中が見たいって、帰ってからすぐにスキューバダイビングの免許を取りました。30歳くらいかな。だからもう30年以上になります。

グアム、サイパン、パラオ、沖縄、伊豆辺りの海で潜っていました。パートナーと2人で潜る。酸素がなくなった場合、マウスを相手に渡すでしょ。命を預けるという信頼関係がすてきだなって。いままで聞いたことがなかった潮の流れの音、移動するときに縦になる浮遊感が面白い。さすがに60歳を過ぎたら、潜るよりも海辺でハンモックに横になって本でも読んでいる方がいいかなって。コロナもあるし、いまはそんな感じですね。

30年以上続けているといえば、陶芸もそうです。骨董(こっとう)が大好きで、水上勉先生(小説家)がまだお元気なころ、京都でご一緒させていただいた。骨董を見て「高いな~」って言ったら、先生が「あほやな、お前も自分で作れば世界にひとつしかない、得も言われぬ物ができるのに」って。それで先生のところ(長野県の旧北御牧村)で土いじりを始めたのがきっかけです。家で使っている食器はほぼ作りました。自分の欲しいもの、大きな器、汁物とか。確かに世界にひとつなんです。

50周年リサイタルで、ファンの皆さんにプレゼントできたらいいなと思って、50個作りました。先生のお宅にはお嬢さんがいらっしゃる。そこでやらせてもらったんです。


《昨年3月25日、50周年記念コンサートを故郷・熊本でスタート。母、様子さんも久々に同行、そして感謝の親孝行…》


スタッフのみんなが帰った後、一晩余計に泊まりました。いつも娘が一緒だったりするんですが、2人きりでね。部屋に温泉も引いてあり、「1人だとなかなか背中が洗えないでしょ」って母がいうから、「きょうはどこまでも洗うよ」って一緒に入って背中を流しました。

「デビューの日は、いいお天気だったねぇ」「親戚のおばが田舎もんだから、『いきなり団子』(熊本の郷土菓子)をいっぱい作ってきてくれて、みんな『これ何だ?』って言いながらも喜んで食べていたわね。いまは(団子も)有名になったわよね」とか、たわいのない昔話をしたり、聞いたり。すごくいい時間を過ごせました。

母も今年90歳。コロナ禍で外に出なくなって、出られないということもあったけど、足が弱りましたね。だから赤のオシャレな歩行補助機を買ってあげました。それを使ってお天気のいい日に近くの公園に行くと、お友達から「格好いいですね」って言われるんですって。じゃそのときはこう言うのよって。

「娘が買ってくれた、イタリアの高級自転車メーカーの補助機です」って。母は「ん? イタリア、どういうの?」と返してくるから、「も、いいや、赤い自転車で」って(笑)。そんなことを言いながらの毎日です。心配なこともありますが、まだまだ元気でいてほしいですね。(聞き手 清水満)

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