今国会では国会対応に追われる官僚の長時間労働が是正されるかが焦点になりそうだ。内閣人事局が20日に公表した昨年の臨時国会開会中の中央省庁の国会対応業務の実態調査結果では、国会議員による政府側への質問通告について、「土日祝日を除く質疑2日前の正午まで」とする与野党の申し合わせが守られたのは全体の19%にとどまった。官僚が未明まで答弁作成に追われる状況が続けば、政府の政策立案を支える官僚機構の劣化につながりかねない。
衆参両院では議員が首相や閣僚らに質問する際、議論を深めるために慣例として、政府側へ事前に質問内容を通告する。内閣人事局は臨時国会中の昨年11~12月、予算委員会や各委員会における質問通告や答弁作成時間などについて、全府省庁を対象に調査した。
その結果、質問通告全864件のうち、81%が「質疑2日前の正午まで」を過ぎており、質疑前日の午後6時以降の通告も6%あった。このため、質問通告を受けた官僚が答弁作成に着手可能な時刻の平均は、土日祝日を除き質疑前日の午後7時54分。答弁作成を終えた時刻の平均は委員会当日の午前2時56分だった。
各省庁ではタブレットによる答弁で深夜の印刷を軽減したり、「答弁提出を4時間以内」といった時間管理の徹底で作業の効率化を進めている。だが、令和2年の臨時国会では、通告の平均時刻が午後6時46分で、むしろ遅くなっている。河野太郎国家公務員制度担当相は1月20日の記者会見で「国会があるから自動的に残業確定というのは働き方改革の観点から非常によくない」と語った。
政党別の通告時間は調査していないが、野党議員の方が質問通告が遅いケースが目立つ。ある省庁職員は「質問の持ち時間に収まらない量の質問が送られ、用意したのに使われないことも多い」とこぼす。
国家公務員の長時間労働は就職人気の低下にもつながっているとみられる。今年度、国家公務員の総合職採用試験の受験申込者数は約1万8000人で、10年前と比べ3割減った。松野博一官房長官は25日の記者会見で「国家公務員の働き方改革は緊急の課題だ。優秀な人材の確保にもつながる」と強調した。(永井大輔)