日本人トップの3位となっても、ゴール直後、唇をかみしめた。29日の大阪国際女子マラソンで、安藤友香(ワコール)は目標に掲げていた自身初のマラソン優勝と2時間21分36秒の自己ベスト更新を逃し「悔しい気持ちでいっぱい」。それでも8回目のマラソンは、収穫と課題が見えた価値あるレースになった。
最初の10キロを32分56秒で通過。日本記録とは3秒差の高速の序盤となったが、ペースメーカーに牽引され「すごくいい感じでつかせてもらっていた。このまま粘り強くいけば、自分の望む結果が出るはず」とリズムよく足を運んだ。
しかし30キロを過ぎてから、世界が遠のいていった。ペースメーカーが離れ、エチオピア勢の2人がスパート。「自分の弱さが出てしまった」とついていくことができなかった。口が開き、苦しい表情に変わる。腕の振りを大きくして懸命に追ったが、再び背中をとらえることはできなかった。表彰式を終えた後、会見では「捨て身の覚悟でいけばよかった。(デッセとシセイはスパートから)1キロくらいはペースが上がっているけど、そこからはそうでもなかった。その苦しいところでの1キロの乗り越え方が今後の課題」と冷静にレースを振り返った。
6年前の初マラソンでマークした自己ベストが、今も自身に重くのしかかる。今回も懸ける思いは強かったが「記録は超えられなかったけど、違ったものは見えてきたかな」という。30キロまでの高速ペースで余裕を持ちながら走れたことが、大きな収穫だった。
東京五輪はMGCで敗れてマラソン代表を逃し、1万メートルで出場権を勝ち取ったが22位で不完全燃焼に終わった。パリ五輪は「本職のマラソンで出たい」と強調する。この大阪で得たものが、10月の勝負への糧となる。(大石豊佳)