朝晴れエッセー

私の生きがい・1月29日

令和3年11月。胃がんの告知を受けました。医師の「胃がんです」という突然の宣告に、頭の中はボ~ッとし、言葉は出ませんでした。女房と無言で診察室を出ました。病院を出たところで女房が、ぽつりと「頑張りましょう」と女房自身に語り掛けるように言いました。その様子から女房には事前に知らされていたなと思いました。

告知されて以来、「定期検診を面倒がらずに受けていれば良かったのに」と自分の愚かさを恨んだり、悩んだりしました。しかし、悩んでも恨んでもがんは治らない。家族も暗い気持ちになるだけだと思いました。それならば今まで通り前を向いて生きよう。それしかないと開き直りました。それからは眠れるようになりました。

私は、孫が小学校に入学してから、卒業するまで、登校班の付き添いをしました。がんになったし、孫は卒業したしで、付き添いをやめようと思いました。そんなとき、お母さんたちから「また登校班やりましょうよ」と声を掛けていただきました。

「おじいちゃん」と駆け寄ってくる子、私がはめているカエルさんの手袋に握手する子、握手したいけど遠慮がちに眺めている子、「お兄ちゃんとケンカした」とみんなにしゃべりまくっている子、下を向いて黙々と歩く子、校門の前で必ず私と握手して昇降口に向かう子等々さまざまです。

さまざまだから活気を感じます。生きています。抗がん剤の副作用で体重が激減し、ヨチヨチ、フラフラ歩いている私は、そんな子供たちから「元気をもらい、生かされているんだ」。そう思いました。明日の登校班を楽しみにしている私です。


川野勝己(77) 茨城県笠間市

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