花田紀凱の週刊誌ウォッチング

(909)連続強盗、取材力見せた『文春』

強盗殺人事件の現場となった住宅=24日午前、東京都狛江市(寺河内美奈撮影)
強盗殺人事件の現場となった住宅=24日午前、東京都狛江市(寺河内美奈撮影)

闇サイトでアルバイトを探すというのはまだわかる。しかし、報酬が100万円と言われたら怪しいと思い、仕事が強盗とわかったら、普通の人間ならやめるだろう。

全国で続発している連続強盗事件、既に逮捕された青年たちが、一見、普通の若者に見えるところが怖い。

この手の事件なら『週刊新潮』の得意技だが、今回は『週刊文春』(2月2日号)が取材力を見せつけた。

「全国連続強盗 予告した男の告白『黒幕はマニラにいる』」

「文春リークス」を通じて連絡してきた情報提供者Xの話。Xの情報が狛江の事件後判明した事実と符号する点が多く、『文春』はXの話を中心に取材。新聞・テレビに先行している。

Xの話。

〈強盗グループを遠隔操作するA〉は〈日本で詐欺事件を起こし〉、現在はマニラのビクタン収容所に抑留中。

〈「Aは日本に強制送還されると懲役刑が確実なので、収容所を出たくない。(中略)施設の中から犯罪行為を指示して金を貯(た)め、いずれ第三国に逃げるつもり」〉

〈「一九年十一月。フィリピンを拠点として日本に振り込め詐欺の電話をかけていた〝掛け子〟三十六人が入管によって拘束、一部はビクタンに収容された。Aらは彼らを利用し、収容所内から特殊詐欺を仕掛けた」〉

が、振り込め詐欺はATMから引き出せる金額に限度がある。で、〈手荒な強盗グループに〝転職〟した〉。

スペースの関係で略すが、『文春』はその手口も詳細に報じている。

〈Aが実行犯とやり取りする際、漫画のキャラ(「ルフィ」など)を〝コードネーム〟として使っていた〉

『文春』によると同一グループが関与したとみられる強盗・窃盗事件は全国で30~40件に達するという。

今週、もう一本、必読は『ニューズウィーク日本版』(1・31)の大特集「実録 中国海外警察」。

この無法極まる「海外警察」が秋葉原にもあるとスクープしたのは『新潮』(昨年11月17日号)だが、後追いがなかったのは惜しまれる。

(月刊『Hanada』編集長)

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