朝晴れエッセー

昭和から来た手紙・1月28日

年賀状が届き、ほどなくして、はがきには書きにくかったことなのか、書き忘れたことなのか、幼なじみのひろみちゃんから封書が届いた。「いわゆる終活ってことで年賀状をやめます。よかったらラインしませんか」。郵便番号が5桁の小さな封筒、切手は鉄腕アトム。まるで昭和から来た手紙。

子供時代の全てが昭和だった。買い物帰り、走って転んで卵を割って晩ご飯はオムライスに。庭のサルスベリの木、本当に滑るか試した。猫のまねをして垣根の上を歩いた。おそろいの服を買ってもらい元祖双子コーディネート。飾り羽子板を持ち出し、兄妹対抗はねつき大会。ひろみちゃんが引っ越しして子供時代が終わった。大人になって就職した次の年、本当に昭和が終わった。

あんなに遊んだのにひろみちゃんとの写真は数えるほどしかない。海をバックに大事そうにビンを持っている写真。ビンの中身が思い出せない。今ならビンの中身も写真に収めただろう。写真は残っていないけれど、心の中には鮮やかな場面がいっぱい入っている。オムライスの黄色、サルスベリの白い花、おそろいの白いスカート。

写真はアルバムにあふれ、検索するとすぐに答えが出る時代になった。鉄腕アトムの切手が発売されたのも、郵便番号が5桁から7桁になったのも昭和じゃなくて平成になってからだった。

昭和を語るのも、終活もまだ早いと昭和一桁生まれの写真の父が笑っているように見えた。


橋めぐみ(55) 京都府長岡京市

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