永田町では政党の合従連衡が繰り返されてきたが、立憲民主党と日本維新の会が昨秋の臨時国会で手を組んだのは驚きだった。「水と油」の連携は双方にとってリスクの伴う決断だったが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題に関し、政府・与党を動かす形で被害者救済法を成立させる成果を挙げた。23日召集の通常国会でも、両党は協調を続けることになった。
ただ、維新は立民だけでなく、与党・自民党との距離も縮めている。17日には馬場伸幸代表が自民の茂木敏充幹事長と会談し、憲法改正、安全保障、エネルギー問題で連携していく方針を確認。翌18日には茂木氏を大阪・関西万博会場の視察に招き、共同代表の吉村洋文府知事らが夕食をともにしてもてなした。その2日後には立民の岡田克也幹事長らの視察も受け入れたが、食事の供応はなしだった。
維新としては自民と立民を両てんびんにかけ、万博への協力や「身を切る改革」など政策実現につなげる狙いがある。下世話にいえば二股をかけたわけだが、維新関係者は野球の大谷翔平選手を引き合いに「二刀流」と表現。「自民と立民のダメなところをあぶり出し、ばっさり斬る」と意気込む。
公然と二股をかけられた側からは「どんな思惑なのか分からん」(自民幹部)と疑念の声も出る。とはいえ、自民とて法案や予算の円満成立のため、時に国民民主党、次は維新と野党を使い分けてきた。「連立相手を変えることもできる」とばかりに、相方の公明党を牽制(けんせい)するダシに野党を利用してきた節すらあるので、あまり人のことは言えない立場だろう。
立民だって文句は言えないはずだ。維新に猛然とアプローチしつつ、「野党共闘」で選挙協力を重ねた共産党との関係もキープ。あわよくば選挙協力と期待して維新に抱き着き、政府追及では共産の調査力に頼る。その結節点として主導権を握ろうというのが立民の戦略だが、そんな都合のいい話に共産がいつまでも甘んじているとも思えない。
二股作戦といえば聞こえは悪い。とはいえマンネリ国会が流動化し、面白くなってきたのは間違いない。これが国民のための政策実現につながるならば大歓迎だ。
【プロフィル】千葉倫之
平成14年入社。千葉総局、秋田支局、東北総局、東京本社整理部、社会部を経て政治部。現在は野党キャップ。